使徒たち

エルガー：オラトリオ『使徒たち』作品49

エドワード・エルガーによるオラトリオ『使徒たち』作品49は、独唱、合唱、管弦楽のために書かれた大規模な声楽作品です。彼のキャリアにおける重要な時期、特に『エニグマ変奏曲』や『ゲロンティアスの夢』で国際的な名声を確立した後に作曲されました。初演は1903年10月14日に行われています。

作曲の背景と構想

『ゲロンティアスの夢』の成功を受け、初演の舞台となったバーミンガム・トリエンナーレ音楽祭から新作の合唱作品を委嘱されたことが、本作の作曲のきっかけとなりました。しかし、エルガー自身の言葉によれば、この作品の主題は、彼が言葉を覚えるよりも幼い頃から心に温めていた構想に基づいています。それは、イエス・キリストの十二使徒たちの物語と、彼らが目撃した奇跡的な出来事に対する彼らの反応を描くというものです。

委嘱は1901年12月には決定していましたが、エルガーは『戴冠式頌歌』作品44の制作に注力していたため、『使徒たち』の作曲に本格的に着手したのは1902年12月半ばになってからです。リブレットは、ヘンデルの『メサイア』やメンデルスゾーンの『エリヤ』といった過去の偉大なオラトリオ作品と同様に、聖書から直接テキストを選び、構成されました。作曲は順調に進み、ヴォーカル譜が1903年6月、そして総譜が同年8月17日に完成しました。

作品の特徴と主題

『使徒たち』は、イエスの説法、奇跡、磔刑、復活、そして昇天といった出来事を、十二使徒たちの視点を通して描く説話的な作品です。続くオラトリオ『神の国』では、その後の使徒たちの活動が描かれており、当初『神の国』は『使徒たち』の後半部分として構想されていました。エルガーは後に、これら二作を三部作の最初の二つと位置づけ、『最後の審判』という第三部を構想しましたが、こちらはスケッチのみで完成には至りませんでした。

この作品の大きな特徴は、エルガーが哲学的な教義そのものよりも、人間の内面的な動機や感情に強い関心を寄せている点です。そのため、物語の中で特に重要な役割を果たすのは、二人の罪人、すなわちマグダラのマリアとイスカリオテのユダです。ユダの裏切りは単なる悪行としてではなく、彼自身の複雑な動機や心理的な葛藤が深く掘り下げて描かれています。

本作はユリウス・ブーツによってドイツ語に翻訳され、ドイツでの初演も実現しています。

楽器編成

本作は、大規模な管弦楽、合唱、そして独唱者によって演奏されます。

管弦楽: 大編成のオーケストラに加え、夜明けを告げるショファル（伝統的な角笛、通常はフリューゲルホルンなどで代用）が使用されます。
合唱: 2群の主要な合唱団と、小合唱団が必要です。
独唱: 6人の独唱者が重要な役割を担います。それぞれのパートと主要な配役は以下の通りです。
ソプラノ: 聖母マリア、天使ガブリエル
アルト: マグダラのマリア
テノール: 聖ヨハネ
バス: 聖ペトロ、イエス、イスカリオテのユダ

構成

作品は2部、7節から成り、切れ目なく続けて演奏されます。使用されるテクストは聖書およびその外典から採られています。

第1部

The Calling of the Apostles: 夜明け前の静寂から始まり、日の出とともに使徒たちが一人ずつイエスによって召し出される様子が描かれます。
By the Wayside: イエスによる説法が描写されます。特に真福九端（幸福の山上の説教）が音楽的に想起されます。
By the Sea of Galilee: ガリラヤ湖畔の情景が描かれますが、中心となるのはマグダラのマリアです。嵐の夜の場面の後、彼女の改宗が劇的に表現されます。場面は後にカエサレア・ピリピやカペナウムへと移り、第1部は合唱によるエピローグ「Turn ye to the stronghold」で締めくくられます。

第2部

The Betrayal: 受難の物語へと続く場面ですが、焦点はイスカリオテのユダの人物像とその動機に当てられます。彼はイエスを操り、奇跡を起こさせて自らの王国を築かせようとしているかのように描かれます。イエスの裁判と有罪判決は舞台裏で行われ、寺院や群衆を表す合唱がその様子を伝えます。最終的にユダは絶望的な結末を迎えます。
Golgotha: 磔刑の場面ですが、エルガー自身が「スケッチに過ぎない」と語る通り、簡潔な描写に留められています。イエスの最後の言葉「エリ・エリ・ラマ・サバクタニ」（わが神、わが神、なぜわたしを見捨てられたのですか）は管弦楽のみで奏され、続いて合唱が「真にこの人は神の子だった」とピアニッシモで応答します。
At the Sepulchre: イエスの復活の物語は、幸福感にあふれ、春の訪れを感じさせるような間奏曲の中で、語り手と天使の合唱によって簡潔に語られます。
The Ascension: 昇天の奇跡自体は二次的な扱いです。この節の中心は、使徒たちが天使たちの賛美に加わりつつも、地上にイエスの教会を築くという使命を改めて自覚し、そのための決意を固める姿にあります。この場面が楽曲の終結を告げ、独唱、合唱、管弦楽の全てが一体となった壮大な響きで締めくくられます。

『使徒たち』は、聖書の物語を人間的な視点から深く掘り下げた、エルガーのオラトリオ作品の中でも特に重要な位置を占める作品です。

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