侍講(じこう)とは
侍講とは、
君主(
天皇や
皇太子など)に
学問を講義する役職であり、その任に当たる人物を指します。別名として侍読(じとう、じどく)とも呼ばれていました。この制度は、
君主の学識向上を目的として、古くは奈良時代から存在していました。
歴史
奈良時代から明治時代初期まで
奈良時代から、
天皇、
皇太子、
親王などの
皇族に対して侍講や侍読が付けられるようになりました。これは、
君主が優れた知識や教養を身につけることが、国家の安定と繁栄に不可欠であると考えられていたためです。
明治時代の侍講
明治時代に入ると、侍講は官制に組み込まれ、
天皇や
皇太子の教育を担う重要な役割を果たすようになりました。
明治初期の侍講:
『太政類典』によると、明治元年6月15日に「侍読ヲ設ク」という記事があり、平田延胤(大角)と中沼了三(葵園)がそれぞれ皇学と漢学の侍講に任じられました。この時期は、資料によって「侍読」と「侍講」の表記が混在していました。
その後、明治3年には加藤弘之、明治4年には元田永孚、西周が「侍読」に任じられました。
「侍講」への改称と制度化:
明治8年1月には、「侍読」が「侍講」に改称され、宮内省官制の中に正式に位置づけられました。この時、福羽美静が二等侍講、加藤弘之が三等侍講、元田永孚が四等侍講に任じられました。
明治10年8月には侍講局が設置され、明治12年には御系譜掛や御陵墓掛なども包摂して組織が拡大しました。
侍講制度の廃止:
しかし、侍講の制度は明治18年10月をもって廃止され、侍講局の業務も次第に解体されました。明治19年2月の官制改正により侍講局は正式に廃止され、関連文書は
図書寮に引き継がれました。
東宮侍講
侍講の制度自体は廃止されましたが、
皇太子の教育係としての東宮侍講はその後も任じられました。嘉仁
親王(後の大正
天皇)の東宮侍講には、
川田甕江や三島中洲が任じられました。これらの人々は、
皇太子の人格形成や
学問の基礎を築く上で重要な役割を果たしました。
侍講の役割
侍講は、単に
学問を講義するだけでなく、
君主の人間形成にも深く関わっていました。彼らは、古典や歴史、倫理などを通して、
君主としての心構えや道徳観を養うことを目指しました。また、時事問題や政治についても議論し、
君主が広い視野を持つことができるように導きました。
関連事項
*
侍補: 侍補は、
君主の側近として、政治や日常生活の様々な面で補佐をする役職です。侍講とは役割が異なりますが、
君主を支える重要な存在であるという点で共通しています。
侍講は、
君主教育において重要な役割を担ってきました。その歴史は、日本の教育制度や
君主制の変遷を理解する上で、重要な手がかりとなります。