依田康勝

依田康勝

依田康勝（よだ やすかつ）は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけての武将です。官位は従五位下・右衛門大夫。別名として康貞、康真がありますが、これらは読み書き間違いの可能性があります。兄の跡を継いで「松平」姓を名乗っていた時期もあり、後に加藤康寛（宗月、加藤四郎兵衛）と改名したともされています。

生涯

天正2年（1574年）、依田信蕃の次男として生まれました。幼少期は兄・康国と共に甲斐武田氏の人質となり、天正10年（1582年）の織田信長による武田征伐で武田氏が滅亡すると、徳川氏の人質となりました。

天正11年（1583年）に父が死去すると、兄が家督を継ぎましたが、天正14年（1586年）には徳川氏の家臣として取り立てられ、徳川家康の前で元服し、家康から「康」の偏諱を授かり、松平姓を名乗ることを許されました。天正18年（1590年）の豊臣秀吉による小田原征伐には、徳川勢の一員として兄と共に従軍し、後北条氏の上野国の拠点を攻撃しました。同年4月、兄が上野石倉城攻めで戦死したため、家康は康勝に家督を継がせました。康勝は徳川勢に属して、相模国津久井城、大磯城などを攻めました。小田原征伐後、家康が関東に移ると、武蔵国と上野国で3万石を与えられ、藤岡城（現・藤岡市）城主となりました。

慶長5年（1600年）1月23日、大坂の旅宿で囲碁をしていた際、同僚の小栗三助を喧嘩口論の末に殺害してしまいます。小栗が囲碁で負けた後に依田を罵ったことが原因とされています。また、康勝が兄の没後にその未亡人を妻としたことを揶揄され憤慨して事件を起こしたとも伝えられています。これにより、康勝は改易され、しばらく高野山の蓮華定院に蟄居しました。その後、結城秀康の家臣となりました。

秀康に仕える際、世間を憚り、母方の加藤氏の苗字から加藤康寛（加藤宗月）と改名しました。越前での康勝の子孫は蘆田姓（もしくは芦田）を称しましたが、康勝自身は終生、依田姓で通していたという説もあります。慶長6年（1601年）2月、秀康が越前国に封じられると、北ノ庄城（のちの福井城）受け取りのために、秀康譜代の家臣である本多富正と康勝が先行して越前に派遣されました。同年9月、美濃国との交通の要衝である越前国大野郡木本（このもと）に5,000石を預けられました。

同慶長6年、康勝は兄・康国の菩提を弔うために、父・信蕃、祖父・芦田信守が拠った信州春日城の麓に、一族の天外大雲禅師を開山として康国寺を建立しました。同所には康国夫妻の墓が残っています。慶長11年（1606年）の秀康の死に際し、幕府は、康勝を含め、複数の福井藩の重臣に対し殉死を固く禁じました。大坂の陣の際は「大野郡が一揆が多発する地域」という理由で大野城代として留守の防備に当たりました。

元和9年（1623年）に死去したと言われていますが、没年には異説もあります。

子孫は福井藩の重臣・芦田信濃家として、家老を輩出する高知席の17家の一席を担いました。

『芦田記』（依田記）

幕府の命により『芦田記』（依田記）という家伝を残しました。この家伝には、祖父・芦田信守、父・信蕃、兄・康国、そして当人である康真までのことが綴られており、依田氏関連の重要な史料の一つとなっています。成立は寛永20年（1643年）のこととされています。

家臣

清野満成

参考文献

南佐久郡誌編纂委員会 編『南佐久郡誌』《近世編》南佐久郡誌刊行会、2002年3月25日。
田中豊茂「信濃中世武家伝」信濃毎日新聞社 2016年

外部リンク

芦田記 - 早稲田大学図書館古典籍総合データベース

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