保安基準の緩和

保安基準の緩和：日本の道路を走る大型特殊車両の規制と例外

日本の道路を走行する車両は、道路運送車両法で定められた保安基準に従わなければなりません。しかし、大型特殊車両や建設機械など、基準を満たせない車両も存在します。そこで、保安基準の緩和制度が設けられています。この制度は、車両の寸法、重量、装備など、特定の基準項目について例外を認めるものです。

保安基準の概要

保安基準は、車両の寸法（全長、全幅、全高）、重量（軸重、輪重、隣接軸重）、旋回半径などを規定しています。例えば、大型車両は全長12メートル、全幅2.5メートル、全高3.8メートル、軸重10トンなどを超えることはできません。

さらに、安全装備に関する規定も含まれています。高速道路を走行するバスは、全乗客分のシートベルト、ABS、自動ブレーキを備える必要があります。定員30名以上のバスは非常口も必要です。大型貨物自動車には速度抑制装置が義務付けられています。

これらの基準は、道路交通の安全と円滑な運行を確保するために定められています。

保安基準緩和の対象となる車両

保安基準の緩和は、通常の車両では満たせない特殊な構造や用途を持つ車両を対象としています。具体例としては、以下のものがあります。

大型トレーラー
ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーンなどの建設機械
ブルドーザー、ロードローラーなどの土木機械
ストラドルキャリア
離島などで使用される大型貨物自動車
高速道路を走行しない路線バス
除雪車
空港、港湾で使用される車両
超小型モビリティ
分割可能な大型貨物を輸送する車両
搭乗型モビリティロボット
動力付きキックスケーター
宮型霊柩車
トレーラーハウス
ダブル連結トラック
災害対策車両
試作自動車
農耕用トラクタ（作業機装着時）

保安基準緩和の申請と審査

保安基準の緩和を受けたい場合は、申請書を地方運輸局長に提出し、審査を受けなければなりません。申請書には、車両の仕様、用途、緩和が必要な理由などを詳細に記載する必要があります。

審査に合格すると、「保安基準緩和車両」として登録され、自動車検査証に緩和内容と運行上の制限が記載されます。

緩和標章と運行上の制限

保安基準の緩和を受けた車両には、「▽」マークの緩和標章を車両後部に表示することが義務付けられています。これは、運行上の制限があることを示すものです。制限の内容は、車両の寸法や重量、通行可能な道路など、緩和内容によって異なります。

一括緩和制度

特定の種類の車両については、個々の申請ではなく、一括して保安基準の緩和を認める制度があります。これは、製造メーカーなどが事前に申請することで、同型の車両は全て緩和を受けられるようになる制度です。農耕用トラクタや除雪車などが対象となるケースがあります。

農耕用トラクタの特殊な取扱い

農耕用トラクタは、作業機を取り付けた状態で公道を走行することが認められています。しかし、作業機の種類や寸法によっては、保安基準の緩和を受け、緩和標章の表示が必要となる場合があります。また、大型特殊免許や牽引免許が必要となる場合もあります。

通行条件

保安基準緩和車両は、通行許可を得る必要がある場合があります。道路管理者は、車両の寸法や重量、通行ルートなどを考慮し、通行条件を定めます。

まとめ

保安基準の緩和制度は、特殊な車両の運行を可能にする重要な制度です。しかし、申請手続きや運行上の制限など、複雑な点もあります。車両の構造や用途に応じて、適切な手続きを行い、安全に運行することが重要です。

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