保科孝一

保科孝一について

保科孝一（ほしな こういち）は、明治5年9月20日（1872年10月22日）に生まれ、昭和30年（1955年）7月2日に逝去した、日本の国語学者であり文部官僚です。彼の研究や活動は、国語教育の発展に大きな影響を与え、今なおその功績は評価されています。

経歴

保科は、置賜県米沢（現在の山形県米沢市）で、米沢藩士である保科忠次郎の子として生まれました。彼は第一高等学校を卒業後、1897年に東京帝国大学国文科を修了しました。その後、上田萬年が創設した国語研究室の助手として職を得、その後文部省にて国語国字問題の研究に従事しました。彼は1898年から1947年までの50年間、国語政策に関与し続けました。

1901年には国語調査委員会の補助委員として参加し、1902年には東京帝国大学の助教授に就任しました。また、教科書の国定化に関わる編修委員を務めるなど、国語教育に深く関与しました。1911年にはドイツとフランスでの調査研究を行い、1913年に帰国。その後も教育雑誌『國語敎育』を創刊し、1927年には教授に昇進してからも東京高等師範学校や東京文理科大学で指導を行いながら、様々な研究を続けました。

研究内容と業績

保科の研究は、特にアメリカの言語学者ウィリアム・ドワイト・ホイットニーの研究を紹介することから始まりました。彼は国内初の方言採集簿を作成し、八丈方言の文法研究にも着手しました。彼の言語学における立場としては、表音式仮名遣いの推奨や漢字の廃止を目指す漢字制限を訴え、公的機関での口語文の導入を主張しました。また、小学校令策定前に発音主義に基づく假名遣いを提案したことでも知られています。

戦時中には、民族の精神が豊かに反映された国語の標準化の必要性を訴え、国語審議会で「標準漢字表」を制定しましたが、国粋主義的な国語学者たちから強い反発を受けました。戦後は漢字制限や仮名遣いの改定を推進し、国語改革の基礎を築いたと評価されています。

彼の著書『国語学小史』は、国語学史において重要な書籍とされますが、その内容の多くは上田萬年の影響を受けているとされています。このことから、保科自身の独自の視点が希薄であるとする批判も存在しています。

家族・親族

保科の家族について、父である保科忠次郎は米沢藩士であり、伯父の宮島誠一郎は明治時代に影響力を持った官僚・政治家でした。彼の背景もまた、彼の研究活動に多くの影響を与えたと思われます。

著書

保科は数多くの著書を出版しました。その中には『言語発達論』や『国語学小史』、さらには『国語教授法指針』や『言語学講話』などがあり、これらの著作は国語教育や言語学の発展に寄与しました。また、共編著としては『大正漢和字典』や『詳解漢和新辞典』などもあります。

彼の業績は現在も多くの研究者たちに影響を与え続けており、国語学の分野での彼の貢献は軽視されるものではありません。

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