元帝 (東晋)

東晋初代皇帝・元帝（司馬睿）

元帝（げんてい）は、東晋の初代皇帝であり、名は司馬睿（しばえい）、字は景文（けいぶん）である。西晋の皇族として生まれた彼は、混乱の時代を経て江南に亡命し、東晋を建国する。しかし、その道のりは決して平坦ではなかった。

生涯

司馬睿は、河内郡温県（現在の河南省温県）に生まれた。父は琅邪恭王（ろうやきょうおう）司馬覲（しばきん）。西晋王朝において、彼は琅邪王（ろうやおう）に封じられる。

しかし、西晋は内紛「八王の乱」により衰退。司馬睿自身も、政争に巻き込まれ、幾度も危機に瀕する。王導（おうどう）の進言により、司馬睿は建業（現在の南京）に移り、江南の安定に尽力する。

311年、西晋の懐帝（かいてい）が匈奴系の漢（後の前趙）に捕らえられると、司馬睿は盟主として推戴される。そして316年、西晋が滅亡すると、江南の貴族や豪族の支持を得て皇帝に即位、東晋を建国する。

権臣との対立

東晋の皇帝となった司馬睿だったが、その権力基盤は脆弱だった。特に、王導・王敦（おうとん）兄弟の勢力が強く、政治の実権を握っていた。当時の人々は「王と馬と天下を共にす」と言い、琅邪王氏の権勢を揶揄した。

司馬睿は、劉隗（りゅうかい）や刁協（ちょうきょう）といった腹心を登用し、王氏の勢力を削ごうと試みる。しかし、322年、王敦が反乱を起こし、刁協らが殺害されるという事態に陥る。司馬睿は王敦と和睦するも、心労が重なり、まもなく崩御した。

出生に関する異説

北斉で編纂された『魏書』には、司馬睿が牛金の隠し子であるという説が記されている。これは、東晋の正統性を否定するための政治的な意図があったと考えられる。

宗室

司馬睿には、多くの王妃や側室がいた。長男の司馬紹（しばしょう）は、彼の後を継いで東晋の第2代皇帝・明帝（めいてい）となる。六男の司馬昱（しばいく）も、後に第8代皇帝・簡文帝（かんぶんてい）となった。

王妃：虞孟母（元敬皇后）
側室：荀氏
長男：明帝 司馬紹
次男：琅邪孝王 司馬裒
側室：鄭阿春
五男：琅邪悼王 司馬煥
六男：簡文帝 司馬昱
皇女：尋陽公主
側室：石婕妤
三男：東海哀王 司馬沖
側室：王才人
四男：武陵威王 司馬晞

まとめ

司馬睿は、動乱の時代に東晋を建国した初代皇帝である。しかし、その治世は権臣との対立に苦しみ、安定したものではなかった。彼の生涯は、亡命政権としての東晋の不安定さを象徴していると言えるだろう。

参考資料

* 『晋書』巻6 帝紀第6 中宗元皇帝

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