王敦

王敦（おう とん）

王敦（266年 - 324年）は、中国の五胡十六国時代の軍人。字は処仲。琅邪郡臨沂県出身。東晋の礎を築いた功臣でありながら、その野心から反乱を起こし、歴史に名を残した人物です。

生涯

若き日

王敦は若くして才能を発揮し、その聡明さは周囲を惹きつけました。特に『春秋左氏伝』に通暁し、清談を好むなど、学識の高さが際立っていました。王導は早くから王敦の非凡さを見抜き、将来を嘱望していました。

西晋時代、恵帝の娘である襄城公主を娶り、駙馬都尉に任じられます。当時の貴族社会は贅沢を競い合う風潮がありましたが、王敦は独自の価値観を持っていました。例えば、宴席での振る舞いを通して、王敦の剛直さと大胆さを示すエピソードが残っています。

八王の乱においては、皇太子の司馬遹を追放から見送るという行動を通して、その義侠心と人道的な一面を垣間見ることができます。この行動は世論から賞賛されました。

司馬倫の簒奪後、王敦は司馬冏らの反乱に呼応し、恵帝の復位に貢献。その後、散騎常侍などの要職を歴任し、着実に実力者としての地位を固めていきました。

実力者として

八王の乱後、司馬越が実権を握ると、王敦は洛陽に呼び戻され中書監に任じられます。しかし、当時の華北は劉淵らの独立によって混乱しており、王敦は妻の公主の侍女や財産を部下に分け与え、質素な姿で洛陽へ向かいました。その後、揚州刺史に任命され、江東の地へ赴任。

司馬睿が王導の献策により建業に拠点を移すと、王敦はその配下となり、重要な役割を担いました。建興3年（315年）には、都督江揚荊湘交広六州諸軍事・江州刺史に任じられ、軍事の全権を掌握。司馬睿が晋王となると、大将軍の位を授けられ、その地位をさらに強固なものとしました。

反乱と最期

永昌元年（322年）、王敦は東晋に対して反乱を起こします。その大義名分は、元帝の側近である劉隗と刁協の誅殺でしたが、実際には王導が彼らを重用した元帝への不満が背景にありました。石頭城を攻略し、官軍に対して勝利を収めます。元帝は王敦に天下を共に治めることを誓約しますが、王敦は反対勢力を粛清。

元帝の崩御後、明帝が即位すると、王敦は再び反乱を企てます。しかし、病に倒れ、後継者として王応を指名。側近の銭鳳に今後の対策を相談しますが、銭鳳らは再び挙兵を企てます。明帝は王敦討伐の機会を窺い、温嶠の密告により、王敦の反乱計画を知ります。

太寧2年（324年）、明帝は王敦を弾劾し、討伐令を下します。王敦は温嶠討伐を名目に再び挙兵しますが、病状が悪化。占い師の郭璞に吉凶を占わせますが、不利な結果が出たため郭璞を斬り殺します。王敦は司馬沖を擁立しようとしますが、王含率いる軍が敗北。王敦は失意のうちに死去しました。享年59歳。

王敦の死後、残党は鎮圧され、遺体は暴かれて斬首刑に処されました。しかし、郗鑒の進言により、遺族に葬儀が許可されました。

王敦の死後、王導は政治の舞台に復帰し、陶侃・庾亮・郗鑒らが台頭。東晋の政治は新たな時代を迎えることになります。

人物

王敦は武力に優れ、人望があり、機略に富んだ人物として知られています。しかし、その野心と傲慢さから、最終的には反乱を起こし、悲劇的な結末を迎えました。彼の生涯は、才能と地位を持ちながらも、道を誤った人物の教訓として、後世に語り継がれています。

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