入玉

将棋における入玉と持将棋：複雑なルールと歴史

将棋において、一方の玉将または王将が敵陣（相手側の三段目以内）に移動することを「入玉」といいます。これは「入王」や「逆馬」と呼ばれることもあります。入玉は、攻め手の難しさや勝敗判定の複雑さを生み出す特殊な局面です。本稿では、入玉とそれに関連する「持将棋」のルール、歴史、そしてコンピュータ[[将棋]]への影響について解説します。

入玉の難しさ

将棋の駒は、後方への移動が可能な駒が限られています。そのため、相手の玉が入玉すると、それを攻めるのが非常に難しくなります。特に、入玉した側は歩兵などの小駒を多く成り、玉の守りを固めやすいため、詰ませる難易度が大幅に上昇します。さらに、両者とも入玉している「相入玉」の状況になれば、勝敗を決着させること自体が困難になります。

持将棋：勝敗判定の特殊ルール

入玉により勝敗が決着しそうにない場合、両者の合意によって対局を中断し、「点数計算」を行い勝敗を決するか、無勝負（引き分け）とします。この無勝負を「持将棋」といいます。

点数計算では、盤上の自分の駒と持ち駒を、玉将0点、飛車・角行5点、その他の駒1点として合計します。プロ棋戦では「24点法」（合計点が24点未満が負け、24点以上30点以下が無勝負、30点以上が勝ち）が用いられ、アマチュアでは時間短縮のため「27点法」を用いる場合があります（27点未満が負け、同点で後手の勝ち）。

持将棋の成立と対応

持将棋が成立すると、初期配置に戻し、先後を入れ替えて指し直しとなります。指し直し局も持将棋となれば、さらに指し直しを繰り返します。持将棋は一局とは見なされず、指し直し局が決着した時点で対局が完了します。ただし、タイトル戦では、持将棋を1局として扱う場合があり、この場合は個人成績に記録されます。

入玉宣言法

対局手数が500手未満で、一方が入玉し、持将棋の合意が得られない場合に、所定の条件を満たした側が「入玉宣言」を行うことで、自分の勝ちまたは持将棋とすることができるルールです。条件は、敵陣内の自玉を除く自分の駒数、持ち駒、点数などが規定されており、これらを満たしていない場合、宣言した側は負けとなります。2022年には公式戦で初めてこのルールが適用された事例があります。

500手指了による持将棋

2019年10月より導入されたルールで、対局手数が500手に達した場合、双方の駒の点数に関係なく無勝負となり、持将棋指し直しとなります。ただし、500手指了時点で王手がかかっている場合は、連続王手が途切れた段階で持将棋となります。

コンピュータ[[将棋]]における入玉

かつてコンピュータ[[将棋]]は、入玉模様になると棋力が大幅に低下していました。これは、過去のプロ棋士の棋譜を学習データとしていたため、入玉という特殊な局面のデータが不足していたことに起因します。しかし、近年は学習データの増加や手法の改善により、コンピュータ[[将棋]]の入玉に関する能力は向上しました。

トライルール

公式ルールではないものの、一部の将棋クラブでは「トライルール」を採用しています。これは、初期配置の相手玉の位置に相手の駒が利いていない場合、そこに自分の玉を進めると勝ちとなるルールです。

まとめ

入玉と持将棋は、将棋における複雑で特殊なルールです。その成立条件や対応、歴史、そしてコンピュータ[[将棋]]への影響など、様々な側面から理解することで、将棋の奥深さを感じることができます。プロ棋戦とアマチュア棋戦でのルール違いにも注意が必要です。 本稿が、将棋の理解を深める一助となれば幸いです。

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