入野義朗

入野義朗：20世紀日本の現代音楽を彩った作曲家と教育者

入野義朗（いりの よしろう、1921年11月13日-1980年6月23日）は、日本の現代音楽史に大きな足跡を残した作曲家です。旧ソ連ウラジオストック生まれ。幼少期から音楽に親しみ、ヴァイオリンやピアノに加え、クラリネットやアコーディオンも演奏するなど幅広い音楽経験を積みました。東京高等学校を経て東京帝国大学経済学部に進学するも、音楽への情熱を捨てきれず、作曲家としての道を歩むことを決意します。

師事と戦時下の経験

大学時代には、戸田邦雄や柴田南雄ら著名な音楽家と交流し、作曲家諸井三郎に師事。和声、対位法、楽式を学びます。しかし、第二次世界大戦の勃発により、海軍経理学校へ。終戦後、銀行員を経て、音楽の道へ進むことを選択します。

現代音楽の開拓者

戦後、入野は新声会に参加し、作曲家として活動を本格化。1951年、日本で初めて十二音技法を用いた作品「七つの楽器のための室内協奏曲」を発表。これは日本の現代音楽史における画期的な出来事でした。その後も精力的に作品を発表し、1953年の『小管弦楽のためのシンフォニエッタ』で毎日音楽賞を受賞するなど、高い評価を得ます。

教育者としての貢献

作曲活動と並行して、入野は教育にも力を注ぎました。東京音楽書院やフェリス女学院短期大学、東京工業大学などで教鞭をとり、後進の育成に尽力。特に桐朋学園では、長年にわたり教授を務め、多くの現代音楽家を輩出しました。日本音楽コンクール作曲部門審査員も務めるなど、日本の音楽教育にも貢献しました。

国際的な活動

入野は、国内にとどまらず、国際的な舞台でも活躍しました。1962年には、自作のオペラ『綾の鼓』がザルツブルク・テレビ・オペラ賞を受賞。また、現代音楽の音楽祭を企画・開催するなど、国際的な交流にも尽力しました。アジア[[作曲家連盟]]の設立にも関わり、その発展にも貢献しています。

多彩な作品群

入野の作品は、管弦楽曲、室内楽曲、声楽曲、舞台作品など多岐にわたります。十二音技法を基盤としながらも、時代とともに表現は変化し、後期の作品では自由な無調性も取り入れています。NHK大河ドラマ「太閤記」の音楽を担当するなど、放送音楽にも携わっています。その作品数は膨大で、録音・出版されたものだけでも数多くの作品が存在します。

後世への遺産

入野義朗は1980年に他界しましたが、彼の功績は現在も受け継がれています。没後、彼の名を冠した「入野賞」と「アジア[[作曲家連盟]]入野義朗記念賞」が設立され、若い作曲家の育成を目的として、今日まで存続しています。これらを通して、入野義朗は、日本の現代音楽の発展に大きく貢献した作曲家、そして教育者として、これからも記憶に留まる存在であり続けるでしょう。彼の作品は、日本の現代音楽の歴史における重要な部分を占め、現代音楽を理解する上で欠かせない存在となっています。

参考文献

国立音楽大学附属図書館編『入野義朗』 (人物書誌大系19) 日外アソシエーツ, 1988
高久暁「入野義朗」『日本の作曲20世紀』音楽之友社、1999
* 秋山邦晴「入野義朗 : 十二音音楽への単独航海者の歌」『日本の作曲家たち. 下』音楽之友社、1979

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