公共事業促進局

公共事業促進局（WPA）とは

公共事業促進局（Works Progress Administration、後にWork Projects Administrationと改称、略称WPA）は、1930年代の世界恐慌下のアメリカで、フランクリン・ルーズベルト大統領のニューディール政策の中核を担った政府機関です。1935年に設立され、1943年まで存続しました。

設立の背景と目的

WPAは、前身の連邦緊急救済局（FERA）の事業を拡大し、世界恐慌によって職を失った数百万人のアメリカ人に雇用機会を提供することを目的としていました。ハリー・ホプキンスが長官を務め、失業者に仕事と収入を与え、生活を支えるとともに、公共施設の建設を通じて経済の活性化を目指しました。

WPAの事業内容

WPAは、以下のような幅広い事業を展開しました。

公共施設の建設: 道路、橋、空港、ダム、下[[水道]]、学校、病院、図書館、公園など、数多くの公共施設を建設しました。これにより、インフラの整備が進み、地域経済の発展に貢献しました。
芸術活動の支援: 音楽、演劇、美術などの分野で失業した芸術家を雇用し、コンサート、公演、美術作品制作を支援しました。これにより、芸術文化の継承と発展を促進しました。
調査・研究活動: 作家や研究者を雇用し、歴史調査や生活史の聞き取り調査などを行いました。これにより、アメリカの歴史と文化を記録し、後世に伝えることができました。

WPAの具体的な活動例

WPAが手がけた主なプロジェクトは以下の通りです。

ヒューストン市庁舎をはじめとする、全米各地の公共建築物の建設
ニューヨーク市営空港（現ラガーディア[[空港]]）の建設・開港
シカゴ市営空港（現シカゴ・ミッドウェー国際[[空港]]）の拡張工事
ディーリー・プラザ（ダラス市）の整備
グリフィス天文台（ロサンゼルス）の建設
カトクティン・マウンテン・パーク（メリーランド州）などのキャンプ場や森林公園の建設
オレゴン州フッド山のティンバーライン・ロッジの建設
芸術家救済プロジェクト（Federal One）
連邦作家計画
歴史記録調査
連邦劇場計画
連邦音楽計画
連邦美術計画
対数表プロジェクト

労働者の雇用

WPAの雇用対象となったのは、生活保護を受給している世帯主や一家の支え手となる人々でした。雇用された労働者の多くは肉体労働に従事し、公共施設の建設などに携わりました。WPAは、労働者の技能や地域ごとの賃金水準を考慮し、適正な給与を支払いました。しかし、雇用機会を公平に提供する一方で、当時根強かった「夫と妻は共働きすべきでない」という考え方や、人種差別も存在しました。

黒人（アフリカ系アメリカ人）の雇用

WPAは、黒人の失業者に対しても雇用機会を提供しましたが、公民権運動の指導者たちは、WPAが黒人を人口比よりも少なく雇用していると批判しました。しかし、WPAは、黒人の失業者がホワイトカラーの職種に就く最初の機会を提供したという評価も存在します。

WPAの雇用目標

WPAの最終目標は、アメリカ経済が回復するまで、生活保護受給者をできるだけ多く雇用することでした。1935年には、約355万人の失業者を雇用することを目標とし、連邦政府から40億ドル以上の予算を得ました。WPAは、労働者の賃金を地域や技能に応じて決定し、週30時間労働制を導入しました。

WPAの終焉

1940年、WPAは政策を変更し、失業者に対する職業訓練を開始しました。しかし、第二次世界大戦が始まると、軍需産業の拡大によって失業率が低下したため、1943年にWPAは解散されました。

WPAに対する批判

WPAは、その活動に対して、以下のような批判を受けました。

予算の無駄遣い: WPAが不必要な建設計画に連邦予算を浪費したという批判がありました。
政治的な偏向: WPAの計画や予算配分が、政治的な判断に左右されたという批判がありました。
集票マシーン: WPAが、ルーズベルト大統領の集票マシーンとして利用されたという批判がありました。
怠慢な労働: WPAの労働は、しばしば怠惰で非効率だったという批判がありました。

WPAの遺産

批判もあったものの、WPAは、アメリカ社会に大きな影響を与えました。道路、橋、公共施設などのインフラ整備は、その後のアメリカの発展に貢献しました。また、芸術文化の支援は、アメリカの文化遺産の形成に大きな役割を果たしました。WPAは、ニューディール政策の中でも最大規模の事業であり、その功績は今もなお評価されています。



参考文献

Jim Crouch, "The Works Progress Administration" Eh.Net Encyclopedia (2004)
Hopkins, June. "The Road Not Taken: Harry Hopkins and New Deal Work Relief" Presidential Studies Quarterly Vol. 29, (1999)
Howard; Donald S. The WPA and Federal Relief Policy (1943), detailed analysis of all major WPA programs.
Lindley, Betty Grimes and Ernest K. Lindley. A New Deal for Youth: The Story of the National Youth Administration (1938)
McJimsey George T. Harry Hopkins: Ally of the Poor and Defender of Democracy (1987)
Meriam; Lewis. Relief and Social Security The Brookings Institution. 1946. Highly detailed analysis and statistical summary of all New Deal relief programs; 900 pages
Millett; John D. and Gladys Ogden. Administration of Federal Work Relief 1941.
Rose, Nancy E. Put to Work (Monthly Review Press, June 1994, ISBN 0-85345-871-5)
Singleton, Jeff. The American Dole: Unemployment Relief and the Welfare State in the Great Depression (2000)
Smith, Jason Scott. Building New Deal Liberalism: The Political Economy of Public Works, 1933-1956 (2005)
Williams; Edward Ainsworth. Federal Aid for Relief 1939.

外部リンク
Posters from the WPA at the Library of Congress
Database of WPA murals
Text and Graphics from 1937 WPA Brochure: "Our Job with the WPA"
Text and Graphics from 1939 WPA Brochure: "QUESTION'S AND ANSWERS ON THE WPA"
WPA Membership Card and Lapel Pin
Samples of WPA Work Assignment Forms used in the 1930s

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