公廨田

公廨田の概要とその歴史的背景

公廨田（くがいでん/くげでん）は、古代日本の律令制度の下で設けられた特定の田地です。この制度は大宝律令に基づき、官人に対して特別に支給されるものでした。公廨田は主に、大宰府に所属する官人や国司（特に史生以上の職位を有する者）に与えられていました。

支給規模とその条件

公廨田の支給は、官職のランクに応じて異なります。大宰府では、最大10町から6段の田地が支給され、国司の場合は2町6段から6段の範囲での支給が一般的でした。また、これらの土地については、実際に耕作する権利も与えられ、不輸租田という特性がありました。これは、農民に課される租税から免除されることを意味します。

春から夏にかけて国司の交替が行われることがありますが、この際、田植えが行われた後に交替があった場合には、前任の国司がその年の公廨田からの収穫を受け取ることができる仕組みがありました。これは、実務においても官人の収入を保護するための配慮がなされていたことを示しています。

職田との統合と公廨田の変遷

公廨田の名称は、初めのうちに官庁の施設費用を意味するものでしたが、実際には官人に与えられていたため、その定義が変わることになります。養老律令が施行される頃には、公廨田は職田と統合され、職分田という名称に変更されました。特に国司の職分田については、従来の「公廨田」と呼ばれる例が残ることもありました。

天平宝字2年の新たな公廨田

このように公廨田は職田と合併し、その定義が変わっていく中で、天平宝字2年（757年）には新たな形として大学寮、陰陽寮、雅楽寮などの中央官司に対して田地の支給が始まりました。この際に支給された田は、再び公廨田と呼ばれることになりました。この新たな公廨田は、かつての公廨の本来の意味に近いものです。

平安時代以降の変化

平安時代以降においては、公廨田と呼ばれる田地は次第に「諸司田」と称されるようになり、段階的にその名称や制度が定着していきました。特に、官人に対する支給という側面から捉えられ、官庁の運営資金や物資供給の一環とされるようになりました。

参考文献

公廨田についての詳細な理解を深めるには、以下の文献を参照することが推奨されます。

• - 虎尾俊哉「公廨田」『国史大辞典 4』（吉川弘文館 1984年） ISBN 978-4-642-00504-3
• - 吉村武彦「公廨田」『日本史大事典 2』（平凡社 1993年） ISBN 978-4-582-13102-4
• - 奥野中彦「公廨田」『平安時代史事典』（角川書店 1994年） ISBN 978-4-040-31700-7
• - 吉村武彦「公廨田」『日本歴史大事典 1』（小学館 2000年） ISBN 978-4-095-23001-6

このように、公廨田は古代日本の政治制度と経済形態を理解する上で重要な要素であり、その歴史を辿ることで当時の官人の生活や活動の様相が浮かび上がります。

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