諸司田

諸司田 (しょしでん)

諸司田は、8世紀中期以降に日本の官庁における官人の給与や経費を支えるために設けられた特定の田地を指します。この制度は、年月の経過と共に徐々にその重要性を増していきました。

背景

平安時代の日本では、財政は主に公民から集める庸・調と呼ばれる税金によって支えられていました。しかし、8世紀中期になると、これらの徴収が思うようにいかず、官庁の運営に支障をきたしました。そのため、国は新たな財源を求める必要に迫られ、結果として諸司田の制度が導入されることになりました。

例えば、757年には大学寮や雅楽寮、陰陽寮、典薬寮、内薬司の各官庁に対して公廨田が与えられました。これらの田地は、それぞれの官庁が必要とする経費を賄うために位置づけられています。その後も官司の数は増え、各地に公廨田が設置されるとともに、その用途も多様化していきました。

元慶官田の制度

881年、元慶5年11月25日には、「元慶官田」と名付けられた新たな制度が施行されました。この日、和泉国を除く4つの国において、図書寮や正親司など49の官庁に専用の田地が配分されました。合計で1235町以上の面積が与えられ、官人の給与や必要経費の支給が可能となりました。さらに、翌年には中央の主要官庁に対しても同様の支給が行われ、太政官の指示に基づき官田から得られる収入がその目的に使われるようになりました。

財政の自立へ

このような制度の背景には、中央の財政が限界に達しているという現実がありました。官庁の経費や人件費を賄うためには、財源を自ら確保する必要が生じ、これが結果的に各官庁の自立性を強めることに繋がったのです。また、独自の財源を持った官庁は、中央への依存から脱却し、次第に自らの土地を所有するようになっていきました。その結果、諸司田は、「諸司領」や「官衙領」といった名称で呼ばれるようになりました。

地方官司の事例

なお、これは主に中央官庁の例ですが、地方官庁においても諸司田の設置が行われたケースが存在します。例えば、大宰府には射田や府学校料田といった名目での田地が設けられ、さらには9世紀に西海道で展開された公営田も、諸司田として捉えることができるでしょう。

参考文献

• - 橋本義彦「諸司田」（『国史大辞典 7』（吉川弘文館、1986年） ISBN 978-4-642-00507-4）
• - 奥野中彦「諸司田」（『平安時代史事典』（角川書店、1994年） ISBN 978-4-040-31700-7）
• - 坂口勉「諸司田」（『日本古代史事典』（朝倉書店、2005年） ISBN 978-4-254-53014-8）

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