内ヶ崎作三郎

内ヶ崎 作三郎

内ヶ崎 作三郎（うちがさき さくさぶろう）は、1877年（明治10年）4月8日に生まれ、1947年（昭和22年）2月4日に亡くなった日本の政治家である。明治・大正・昭和にかけて活動し、衆議院議員を通算で7期務めた。

生涯

内ヶ崎は、1877年（明治10年）、現在の宮城県富谷市にあたる黒川郡富谷村で生を受けた。実家は「内ヶ崎醤油店」あるいは「内作商店」という屋号を持つ醤油醸造業で、地域で古くから酒造業を営む内ヶ崎家の分家に位置していた。

教育を受けた後、第二高等学校を卒業し、東京帝国大学文科大学の英文科で学んだ。さらに見識を広めるためイギリスへ留学し、オックスフォード大学で研鑽を積んだ。帰国後は早稲田大学の教授として、教育者としてのキャリアをスタートさせた。

学者としての地位を確立した後、政治の世界へと転身する。1924年（大正13年）に行われた第15回衆議院議員総選挙において、宮城4区から出馬して初当選を果たし、以後、国会議員として活動した。所属政党は立憲民政党で、党内では主要な役職を担った。

1929年（昭和4年）には、濱口雄幸内閣のもとで内務参与官に就任し、政府の一員として行政に関わった。その後も順調に政界でのキャリアを重ね、1937年（昭和12年）5月には立憲民政党の総務に就任。同年6月には第1次近衛文麿内閣で文部政務次官を務めるなど、重要なポストを歴任した。1939年（昭和14年）4月には立憲民政党の幹事長に就任し、党務を統括する立場となった。さらに1941年（昭和16年）には衆議院の副議長に選出され、議会運営の要職を担った。

内ヶ崎は、普通選挙制度が導入された後の日本の政治情勢についても深い洞察力を持っていたことで知られる。1925年（大正14年）に雑誌『改造』が実施した無産政党に関するアンケートでは、当時の知識層が既成政党の実力を過小評価していると指摘し、「既成政党は不完全でも組織的伝統的の団体にして、過去四十年以上を費したる勢力である。無産政党は一挙にして此堅塁をつくことが出来ぬ」と明確に述べた。この予測は、普通選挙後初の総選挙である第16回総選挙で無産政党の当選者がわずかであったことからも、その正確性が裏付けられた形となった。

第二次世界大戦が終結すると、内ヶ崎は公職追放の対象となった。政治活動から退かざるを得ない状況下で、1947年（昭和22年）2月4日に69歳で逝去した。墓は故郷である富谷市の北雲台にあるほか、東京都の染井霊園にも墓碑が建立されている。

人物・業績

内ヶ崎作三郎は、政治家としてだけでなく、教育者、そして文筆家としても知られている。早稲田大学教授として多くの学生を指導し、その経験から多くの著書も出版した。『人生と文学』や『英国より祖国へ』、『リンカーン』など、文学、思想、人物評伝、国際問題など多岐にわたるテーマの単著や翻訳書があり、当時の知識人や政治家、一般読者に影響を与えた。

故郷である富谷市（旧富谷村）との結びつきも強く、富谷小学校には彼の胸像が建てられ、その功績を称えている。また、1940年（昭和15年）に制定された富谷村歌の作詞も手掛けた。この村歌は、かつて富谷小学校で校歌の一部として歌われていた時期もあったという。

生家である旧内ヶ崎醤油店は、地域の歴史的建造物として保存・活用が図られ、大規模な改修を経て2021年（令和3年）春に観光交流施設「富谷宿観光交流ステーション」（愛称：とみやど）としてオープンした。この施設内には、内ヶ崎作三郎の記念館が設けられており、彼の生涯や業績、そして故郷富谷との深い関わりについて学ぶことができる。

栄典としては、1930年（昭和5年）12月5日に帝都復興記念章を受章している。

内ヶ崎作三郎は、学識と政治手腕を兼ね備え、激動の時代において教育、政治、言論の分野で重要な役割を果たした人物として記憶されている。

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