内藤政優

内藤政優

内藤政優（ないとう まさひろ）は、江戸時代後期に三河国挙母藩の第5代藩主を務めた人物です。官位は従五位下・丹波守。挙母藩内藤家の9代目当主であり、幕末に活躍した井伊直弼の同母兄としても知られています。

生涯

文化7年（1810年）12月5日、内藤政優は近江国彦根藩主・井伊直中の十三男として誕生しました。井伊家時代には直与（なおくみ）と名乗っていました。幼少の頃に病を患い、それが原因で歩行が不自由になったと伝えられています。

文政13年（1830年）9月20日、兄で挙母藩の第4代藩主であった内藤政成の養子となり、家督を継承しました。これは、政成が養子入りの持参金を目的としたものであったとされています。同年12月6日には、従五位下・丹波守に叙位・任官しました。

藩主となると、天保の大飢饉が発生し、政優は領民の救済に尽力しました。しかし、天保7年（1836年）9月21日には、現在の豊田市松平地区において加茂一揆が勃発します。これは、飢饉に苦しむ農民たちが年貢の減免や市場価格の抑制を求めて起こした大規模な農民一揆であり、1万人以上の農民が参加する騒動へと発展しました。

挙母藩は、先代である内藤政成の時代から軍事力の強化に努めていたため、政優は鉄砲隊を組織し、矢作川の堤防で農民たちを撃退することで、一揆を鎮圧しました。この加茂一揆は、東海地方有数の規模を誇り、天保8年（1837年）に発生した大塩平八郎の乱にも影響を与えたとされています。また、加茂一揆は「鴨の騒立（かものさわだち）」という別名でも知られています。

一揆鎮圧後、政優は西洋式の砲術を導入し、軍の近代化に尽力しました。また、藩財政の再建を図るため、倹約や家禄削減といった政策を推進しました。さらに、蘭学を奨励し、自身の生活費を切り詰めて漢籍や蘭学書を購入していたという逸話も残っています。天保13年（1842年）には、幕府の役職である奏者番に任じられました。

嘉永4年（1851年）2月12日、内藤政優は42歳で死去しました。跡は、甥にあたる内藤政文が養子として家督を継承しました。

系譜

実父: 井伊直中
実母: 君田富（お富の方、彦根御前、要妙院）
養父: 内藤政成
正室: 島津寿子（妙倫院、島津重豪の養女、脇坂安董の娘）
側室: 清岡笑子（清岡氏）
養子: 内藤政文（井伊中顕の三男）
養女:
鍼姫（堀田正誠正室、奥平昌高の娘）
松平康圭正室（内藤政成の娘）

家臣

安藤早太郎: 江戸で弓術を学び、挙母でも弓を学び、門人を抱えるまでになりました。天保13年（1842年）には東大寺大仏殿西回廊での通し矢において、当時の日本記録を樹立しています。嘉永4年（1851年）に脱藩し、のち新選組で活躍しました。

内藤政優は、激動の時代に藩主として、領民の救済、軍事の近代化、藩財政の再建、そして学問の奨励に尽力した人物として、その名を歴史に刻んでいます。

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