内藤陳

内藤陳：波瀾万丈の生涯と冒険小説への情熱

内藤陳（1936年～2011年）は、日本のコメディアン、俳優、そして書評家として知られる人物です。本名は内藤信。東京都出身で、プロレタリア文学作家である内藤辰雄を父に持ちました。幼少期は貧しく、父親と共に古本の行商をするなど苦労の絶えない日々を送りました。9歳の時には、母親に会うため単身で無賃乗車をするという大胆な行動に出たこともありました。

中学2年生の時、父親と衝突して家出した内藤は、役者を志し、様々な職を転々として生計を立てます。喫茶店のボーイ、八百屋の荷車引き、選挙運動の旗持ち、サンドイッチマン、大道芸人など、その経験は多岐に渡ります。その後、榎本健一の映演プロを卒業し、浅草のストリップ劇場でコメディアンとして活動を始めます。

1963年、井波健、成美信とともにトリオ・ザ・パンチを結成し、人気コメディアンとしてブレイクを果たします。「俺（おら）、ハードボイルドだど！」などのギャグで一世を風靡しました。1966年にはメンバーチェンジがあり、久里実が加入しました。

内藤は、冒険小説やハードボイルド小説をこよなく愛する読書家としても知られていました。その膨大な読書量と深い知識に目をつけた編集者の誘いを受け、1981年から『月刊プレイボーイ』誌で「読まずに死ねるか！」というエッセイの連載を開始します。この連載では、内外問わず多くの冒険小説やハードボイルド小説を紹介し、高い人気を得ました。

単なる書評ではなく、独自の視点とユーモアを交えた「面白本のオススメ屋」として、読者から絶大な支持を集めました。1981年には日本冒険小説協会を設立し、会長に就任。さらに1983年には日本冒険作家クラブの創設にも携わりました。彼の書評は、単行本「読まずに死ねるか！」シリーズとして出版され、多くの読者に愛されました。

内藤は、多くの小説家とも親交があり、新宿ゴールデン街に日本冒険小説協会公認のバー「深夜＋１」を開店します。このバーは、冒険小説・ハードボイルド小説の作家やファンだけでなく、海外の作家も訪れる社交場となり、多くの交流が生まれました。作家デビュー前の馳星周もここで働いており、彼の著作『ゴールデン街コーリング』にも内藤とのエピソードが描かれています。

俳優としては、映画やテレビドラマにも数多く出演しました。『落語野郎 大爆笑』、『頑張れ！日本男児』、『麻雀放浪記』など、幅広い作品に出演し、その存在感を示しました。また、舞台にも立ち、『もう一度ボギー』などの作品で主演を務めました。

晩年は食道癌を患い、2011年12月28日、75歳で永眠しました。

内藤陳は、コメディアン、俳優、書評家という多彩な顔を持つ、唯一無二の存在でした。彼の残した作品と人柄は、今もなお多くの人の心に生き続けています。彼の生涯は、困難を乗り越え、自らの道を切り開いていく、まさにハードボイルドな人生そのものでした。 貧しい子供時代から、人気コメディアン、そして独自の書評活動、バー経営と、彼の生き方は常に挑戦と冒険に満ち溢れていました。彼の功績は、日本のエンターテインメント界、そして冒険小説界に大きな足跡を残しました。

主な出演作品

映画: 『落語野郎 大爆笑』(1967)、『落語野郎 大泥棒』(1967)、『頑張れ！日本男児』(1970)、『下落合焼とりムービー』(1979)、『キッドナップ・ブルース』(1982)、『麻雀放浪記』(1984)、『玄海つれづれ節』(1986)、『さらば愛しき人よ』(1987)、『日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群』(1988)、『香港パラダイス』(1990)、『心臓抜き』(1992)、『月はどっちに出ている』(1993)、『SAEKO』(1994)、『女ざかり』(1994)、『しずかなあやしい午後に』(1997)、『麗猫伝説 劇場版』(1998)、『これでいいのだ!!映画★赤塚不二夫』(2011)
テレビドラマ: 『独身のスキャット』(1970)、『キイハンター』(1971)、『探偵物語』(1979)、『新・江戸の旋風』(1980)、『盗写1/250秒』(1985)
舞台: 『もう一度ボギー』、『ミュージカル「ザ・ファンタスティックス」』、『贋作春琴抄』

主な著作

『読まずに死ねるか！』シリーズ
『飲らずにいえるか！』
共著、解説なども多数。

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