玄海つれづれ節

映画『玄海つれづれ節』について

『玄海つれづれ節』は、1986年1月15日に公開された東映製作の日本映画です。吉永小百合が主演を務め、歌手の八代亜紀が準主役級で出演していることで話題となりました。この作品は、吉永小百合にとって98本目の出演映画となります。

あらすじ

物語の舞台は福岡県北九州市。夫に蒸発された山岡ゆき（吉永小百合）が、友人たちに助けられながら自立を目指す姿を描いています。原作は兼好法師の『徒然草』第三八段にある「名利に使はれて、閑かなる暇なく、一生を苦しむるこそ、愚かなれ」という一節を基にしていますが、実質的にはオリジナル脚本です。往年の時代劇スターである伏見扇太郎が、自身の役柄をそのまま演じている点も見どころです。

物語の終盤では、吉永小百合演じるゆきが、ヤクザに手の甲を刺されるという衝撃的なシーンが展開されます。

キャスト

山岡ゆき：吉永小百合
緑川月代：八代亜紀
竹田一平：風間杜夫
大峯俊江：草笛光子
南條京太郎：伏見扇太郎
松藤九兵衛：三船敏郎
ハナエ：樹木希林

その他、今福将雄、仲谷昇、川口敦子、勝部演之、高林由紀子、岡田裕介、岩淵健、野村昭子、きたむらあきこ、山谷初男、きくち英一、内藤陳、滝川真子、松岡久美、深江章喜、山田吾一、丹古母鬼馬二、岡本信人、中田博久、ベンガル、木内みどりなど、豪華な俳優陣が脇を固めています。

スタッフ

企画：岡田裕介、坂上順、和田徹
監督：出目昌伸
助監督：吉崎元
脚本：笠原和夫、下飯坂菊馬、兵頭剛
原作：兼好法師「徒然草・第三八段」
撮影：飯村雅彦
音楽：星勝
テーマ音楽：マーク・ゴールデンバーグ

製作の背景

本作は、東映入社前の岡田裕介が企画した作品です。岡田は、1980年の映画『動乱』で吉永小百合と出会い、彼女の新たな一面を引き出したいと考えました。当初は、実在した女性死刑囚をモデルにした『天国の駅』をプロデュースしましたが、その後、吉永のイメージを覆すような役柄を演じさせたいと考え、本作を企画しました。

吉永自身も、それまで演じてきた「耐える女」のイメージから脱却し、活発な女性を演じることに意欲を示しました。原作としてクレジットされている『徒然草』の一節は、「あくせくするな」という教訓を含んでおり、吉永はこれをヒントに、自身の新しい演技に挑戦しました。

脚本の変遷

当初、本作は「小百合版『スティング』」とも言えるコン・ゲームの要素を取り入れた企画でした。吉永と八代亜紀が詐欺師として活躍する痛快劇が構想されていましたが、脚本を担当した笠原和夫は、ストーリーをうまくまとめることができませんでした。そのため、下飯坂菊馬が新たな脚本を執筆しましたが、スケベな要素が強すぎたため、岡田裕介が猛反対しました。最終的には、岡田裕介自身が笠原の脚本をベースに書き直し、完成に至りました。脚本家としてクレジットされている兵頭剛は、岡田裕介のペンネームです。

キャスティング

吉永小百合のコメディ映画初挑戦にあたり、岡田裕介は、吉永と対等に渡り合える人物として八代亜紀を起用しました。八代も吉永との共演を快諾し、本作への出演を喜びました。八代亜紀は、これまで歌手としての活動が主でしたが、本作では本格的な映画出演を果たしました。

製作発表

映画の製作発表会見では、吉永小百合がテクノカットにサングラス、革ジャンという斬新なスタイルで登場し、報道陣を驚かせました。また、劇中でソープ嬢に挑戦すると伝えられた際には、吉永のファンであるタモリが激怒したという報道もありましたが、実際にはタモリはこれを否定しています。

撮影と演出

キャスティングは全て岡田裕介が担当しました。吉永小百合は、自身の役作りのモデルとしてデヴィ夫人と三浦良枝を挙げ、勝ち気でエネルギッシュな女性を演じました。撮影現場は常に和気あいあいとしており、台本にない歌のシーンが追加されることもありました。

八代亜紀は、本作で気のいい借金取り立て屋を演じ、新たな一面を見せました。彼女と風間杜夫との濡れ場は、八代の意向で控えめなものに変更されました。

撮影ロケ地

撮影は、神奈川県横浜市や福岡県北九州市で行われました。北九州市では、若戸大橋周辺を舞台に、旅館や映画館などがロケ地として使用されました。特に、映画館を実際に壊すシーンは迫力がありました。また、撮影期間中は、多くの見物人が集まり、現場は賑わいました。

作品の評価

本作は、吉永小百合が自らPR活動を行いましたが、興行成績は振るわず、赤字となりました。当時、吉永は「最も安定して稼げる女優」として知られていましたが、本作の結果から「興行力に陰りが見え始めた」と評されるようになりました。しかし、本作で吉永が見せた新たな演技は、多くの観客に印象を与えました。

批評家からは、吉永の新たな側面を引き出した作品として評価されています。また、八代亜紀のユーモラスな演技や、風間杜夫のコミカルな演技も高く評価されました。

吉永小百合は、公開から40年近く経った2023年にテレビ番組で、本作の失敗について言及し、「遊びたい放題遊んで、コメディーなんですけど、お客さんはそれにあまりいいリアクションをしてくださらなくて」「今見ると、ちょっとおもしろいのかなと思ってしまうけど、その時代には合わなかった」と振り返っています。

外部リンク

玄海つれづれ節 - 映画.com
玄海つれづれ節 - allcinema
玄海つれづれ節 - KINENOTE
玄海つれづれ節 - 日本映画データベース
玄海つれづれ節 - 国立映画アーカイブ

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