円明園

円明園（えんめいえん）

円明園は、中華人民共和国北京市海淀区にある清代の離宮の遺構で、面積は約350ヘクタールに及びます。この庭園は、2019年に中国の5A級観光地に認定されています。

歴史

円明園の始まりは1709年、清朝4代皇帝である康熙帝が皇子の胤禛（後の雍正帝）に与えた庭園に遡ります。1725年以降、雍正帝の治世下で庭園は拡張され、多くの建物が増築されました。その後、乾隆帝の時代には東側に長春園、南東側に綺春園（後の万春園）が設けられ、これらを合わせて広義の円明園と呼ぶこともあります。

また、長春園にはイエズス会士のブノワやカスティリオーネが設計した西洋様式の建物や噴水も設けられ、西洋の庭園文化が取り入れられました。さらに、嘉慶帝の時代には大規模な修築が行われ、揚州から取り寄せた最高級の建具が使用されました。円明園はヨーロッパでは「Old Summer Palace」として知られるようになり、その美しい風景は多くの文化人に称賛されました。

しかし、1856年に勃発したアロー戦争では、フランス・イギリス連合軍が北京に進入し、円明園は徹底的に破壊されてしまいました。この際、文化人のヴィクトル・ユーゴーなどは破壊行為を非難しましたが、円明園は廃墟と化しました。戦乱後も1900年の義和団の乱や文化大革命によりさらなる荒廃を受け、放置されました。

1984年からは遺跡公園の建設が始まり、一部の地域が修復され、1988年には国の重点保護文化財に指定されました。現在、円明園には多くの観光客が訪れ、入場料は10元、西洋楼遺址区が15元となっています。近年では成人式などのイベントにも利用されるようになっています。

円明園の未来については、廃墟として保存すべきか、あるいは一部復元すべきかが国内で議論されています。2007年には、中国当局が復元事業の開始を発表し、多くのプロジェクトが立ち上がりました。その中には、景観装飾用水の再生水化計画なども含まれており、循環浄化技術による水質改善が目指されています。

中国政府は流出した宝物の回収に力を入れており、過去には海晏堂の十二支像が高校企業により購入されて返還された例があります。2009年にはサン＝ローランが所有していた卯と子の像がオークションに出され、中国側は購入を目指しましたが、最終的にはトラブルが発生し、像はサン＝ローランのパートナーの手元に残されました。一方で、2012年にはオークションが中止され、中国の文化財回収活動に大きな影響を与えました。

また、珠海市には「円明新園」と呼ばれるテーマパークが再現されており、映画の撮影にも利用されています。円明園は過去の栄光を失ったものの、今もなおその価値を誇示し続けています。

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