円楽寺

円楽寺

円楽寺は、山梨県甲府市右左口町に位置する真言宗智山派の寺院です。山号は七覚山で、本尊は薬師如来です。この寺院は、その長い歴史の中で、地域の信仰と文化の中心として重要な役割を果たしてきました。

歴史

創建と発展

円楽寺は、甲府盆地の南端に位置する曾根丘陵上にあります。その歴史は古く、『甲斐国社記・寺記』によると、大宝元年（701年）に役行者によって創建されたと伝えられています。その後、神亀元年（724年）に行基によって再興され、桓武天皇の時代には国家鎮護の祈祷道場となりました。中世には、甲斐と駿河を結ぶ中道往還の沿道に位置していたため、修験道の拠点として栄えました。

中世の戦乱と復興

南北朝時代には、この地で南朝方の武将と北朝方の武将が戦い、円楽寺もその影響を受けました。室町時代には、聖護院門跡の道興が巡礼の際に円楽寺に滞在し、その霊地としての重要性を記録しています。戦国時代には、今川氏の侵攻によって堂宇を焼失しましたが、武田晴信（信玄）によって寺領を安堵され、再建されました。江戸時代には、真言宗醍醐寺報恩院の末寺として、真言宗壇林7か寺の一つに数えられました。

近代と現代

明治時代には、火災によって本堂が焼失しましたが、大正時代に再建されました。現在でも、地域の信仰の中心として、また歴史的な文化財を所蔵する寺院として、多くの人々に親しまれています。

境内

円楽寺の境内には、本堂の他に、六角堂跡や行者堂跡があり、かつての修験道の拠点としての面影を残しています。また、境内からは笛吹川の支流である七覚川や、御坂山地の美しい景色を望むことができます。

文化財

木造役行者及び二鬼像

円楽寺には、山梨県指定有形文化財である木造役行者及び二鬼像が所蔵されています。これらの像は、平安時代から鎌倉時代にかけて制作されたもので、役行者像の胎内には延慶2年（1309年）の修理銘があります。かつては富士山二合目の役行者堂に安置されていましたが、現在は本堂に安置されています。

円楽寺経筒

円楽寺には、中世に奉納された貴重な経筒が所蔵されています。この経筒は、六十六部聖によって奉納されたもので、高さ14.3センチメートルの六角宝幢形をしています。内部には、扁平五輪塔形の泥塔が納められており、当時の信仰の様子を伝えています。

その他

山崎方代

円楽寺は、旧右左口村出身の歌人である山崎方代の菩提寺でもあり、毎年命日には方代忌が行われています。山崎方代は、自然や人間の営みを繊細な言葉で表現した歌人として知られています。

六角堂跡の発掘調査

2005年から2006年にかけて、円楽寺の六角堂跡の発掘調査が行われ、中世の寺院の様子が明らかになりました。

円楽寺は、その長い歴史と貴重な文化財を通じて、地域の信仰と文化を今に伝える重要な場所です。訪れる人々は、この寺院の歴史と文化に触れ、静かな時間を過ごすことができるでしょう。

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