出羽湊利吉

出羽湊 利吉（でわみなと りきち）

出羽湊利吉は、1907年3月20日に秋田県南秋田郡土崎港町に生まれ、本名は佐藤利吉である。彼は出羽海部屋に所属し、大相撲界で活躍した力士であり、最高位は東関脇であった。そのキャリアには数々の栄光と曲折が含まれている。

幼少期と相撲との出会い

利吉は米屋の家に生まれ、地元の土崎尋常高等小学校を卒業後、那波商店の酒造部門で働いていた。地元での相撲活動を通じて腕を磨いていた彼は、大相撲の巡業が秋田にやってきたときに、同郷の力士新海幸藏に勧誘される。2歳年上の兄の後押しもあり、遂に出羽海部屋に入門を決意する。彼は徴兵検査で既に合格していたが、力士としての道を選ぶことにためらいはなかった。最初の四股名は「土ヶ嵜」とし、出身地にちなんで名付けられた。

大相撲界での足跡

1928年5月場所で初土俵を踏んだ利吉は、神経質な性質から初めの頃は土地相撲時代の癖があり、型を修正するために厳しい指導を受けた。1932年に発生した春秋園事件では、幕下から脱退した数少ない力士の一人となるが、1933年に戻ってからは順調に成績を伸ばした。1934年5月の十両優勝を果たし、1935年には初めて新入幕を達成。彼の筋肉質で力強い体格は、千変万化な取り口を可能にし、特に寄り技の腕前は高く評価された。

1937年の1月場所では関脇に昇進したが、そこからの成績は振るわず、急速に平幕に陥落した。しかし、1939年1月場所では奮起し、全勝優勝を達成。この時期、彼は名寄岩を相手に強い戦績を残し、その名を全国に広めた。彼の活躍は、出羽海部屋に7年ぶりの優勝をもたらし、相撲界においてその存在感を示すものであった。

引退後の生活

1944年11月に現役を引退した後、彼は年寄り名・濱風を名乗り、1947年からは渋谷で氷屋を運営。その後、1949年からは鶏肉店に業種を変えたが、体力が必要とされる業務には苦労した。1958年には道玄坂上通りで相撲料理店「ちゃんこ浜風」を開店し、ここで相撲界に残っていたものの、次第に業務の厳しさに直面していった。

晩年

彼は1964年5月17日に57歳でこの世を去るまで、相撲界に対する熱意を持ち続けた。引退後も多くの若手力士に影響を与え、その姿勢は相撲の魅力を次世代へと繋げるものとなった。

主な成績と栄光

通算成績は197勝158敗、勝率は.555であり、幕内成績は121勝120敗。彼は41場所に在位し、その内21場所が幕内であり、また関脇としての地位を3場所、小結としても2場所経験した。

出羽湊利吉は相撲界において、その力量とユニークな戦績で長く記憶される力士であり、現在でもその業績や影響力が語り継がれている。

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