分巻整流子電動機

分巻整流子電動機とは

分巻整流子電動機は、電機子巻線と界磁巻線が並列に接続された電磁石界磁形の整流子電動機です。この構造により、直巻電動機や複巻電動機と同様に、一つの電源から電機子巻線と界磁巻線に電力を供給できます。その汎用性の高さから、様々な用途で利用されています。

特徴

分巻整流子電動機の主な特徴は以下の通りです。

トルク特性: 回転数によるトルクの変化が少ないため、安定した動作が可能です。
整流特性: 他の電動機に比べて、整流特性はやや劣ります。
回転数制御: 界磁制御による回転数制御が可能ですが、その範囲は比較的狭いです。

速度制御・始動法

分巻整流子電動機の速度制御には、以下のような方式があります。

ワードレオナード方式

ワードレオナード方式は、交流電動機と直結した直流発電機（電動発電機）を使用し、その励磁制御によって電機子電圧を可変制御する方式です。専用の直流電源を設けて電動機の界磁制御に使用される可変電圧を供給します。構造が比較的単純で制御も容易なため、直流電動機の発明当初から広く利用されてきました。

応用例として、交流電動機を内燃機関に置き換えたディーゼル・エレクトリック方式やガス・エレクトリック方式、タービン機関に置き換えたターボ・エレクトリック方式が挙げられます。これらの方式は、艦船や電気式気動車、ディーゼル機関車の電気推進システムで広く採用されました。

イルグナ方式

イルグナ方式は、ワードレオナード方式の発電機にはずみ車を取り付け、大きなピーク負荷や脈動のある負荷に対応できるようにしたものです。主に鋼塊圧延機などの用途で使用されていました。

静止レオナード方式

静止レオナード方式は、ワードレオナード方式の電動発電機部分をサイリスタ位相制御電源回路（コンバータ）に置き換えたものです。この方式は、サイリスタレオナード方式とも呼ばれます。

コンバータにインバータ機能がない場合、回生制動は利用できません。しかし、ワードレオナード方式に比べて軽量で効率が良く、制御精度が高く、損失が少ないという利点があります。一方で、力率が悪く、高調波障害（誘導障害）を引き起こす可能性があるという欠点も持ち合わせています。

高周波分巻チョッパ制御

高周波分巻チョッパ制御は、比較的新しい制御方式であり、効率的な電力変換と高精度な速度制御が可能です。従来の方式に比べて、より小型で高効率なシステムを構築できます。

主な用途

分巻整流子電動機は、以下のような幅広い分野で利用されています。

圧延機
起重機
エレベーター

関連項目

* 整流子機の電機子反作用

分巻整流子電動機は、その特性と制御方式の多様性から、様々な産業分野で重要な役割を果たしています。適切な制御方式を選択することで、様々なニーズに対応できます。

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