切支丹屋敷

切支丹屋敷について

切支丹屋敷（きりしたんやしき）は、江戸時代に現在の東京都文京区小日向に存在した、キリシタンを収容するための施設です。新井白石の著書『西洋紀聞』には「きりしたむ屋敷」と記載され、山屋敷とも呼ばれていました。この屋敷に関する詳細な研究は、宮永孝氏による2013年の論文で明らかにされています。

歴史

幕末に水戸斉昭が編纂した『息距篇』には、切支丹屋敷に関する詳しい記述があります。それによると、この屋敷はもともと茗荷谷付近にあった井上筑後守政重の別邸で、井上が宗門奉行に任命された後、牢獄や番所が設けられました。これは正保3年（1646年）のことです。

寛永20年（1643年）には、シチリア出身の宣教師「シヨセイフロウロ」が日本に密入国し、捕らえられて江戸に送られ、伝馬町の牢獄に収容されました。その後、井上が自身の屋敷で預かることを申し出て、切支丹屋敷に移されました。この時、屋敷内に牢獄が作られました。

『息距篇』では「シヨセイフロウロ」とされていますが、実際には、同時期に捕まったのはジュゼッペ・キアラやペトロ・マルクエズを含む10人の宣教師たちでした。彼らは筑前国に漂着し、その後江戸に送られました。この屋敷は、密入国した宣教師たちの幽閉場所として使用されるようになりました。

ただし、切支丹専用の施設ではなく、明暦の大火で伝馬町の牢獄が使えなくなった際には、罪人の牢獄や拷問場所としても利用されました。

切支丹屋敷に最後に幽閉されたのは、『西洋紀聞』で知られる「ヨハンハツテイスタシロウテ」（シドッチ）です。シドッチは宝永5年（1708年）に屋久島に上陸し、長崎を経て江戸に送られ、この屋敷で新井白石の尋問を受けました。

シドッチ以降、宣教師の密入国は途絶え、この屋敷は宣教師の牢獄としての役目を終えました。シドッチが正徳4年（1714年）に亡くなった後、収容される者はいなくなり、切支丹屋敷は享保9年（1724年）か10年頃に火災で焼失し、再建されることはありませんでした。その後、宗門奉行の業務は転びキリシタンに関する調査や書類管理などに限られるようになりました。

寛政4年（1792年）には、宗門奉行の廃止とともに、切支丹屋敷も正式に廃止されました。寛政年間には、畑にする計画が持ち上がりましたが、刑場であったため、穢れた場所として問題視され、計画は中止されました。

2014年7月から8月にかけて、切支丹屋敷跡のマンション建設に伴う調査が行われ、3体の遺骨が発掘されました。DNA解析の結果、そのうち1体はイタリア人のグループに属する男性であり、シドッチの遺骨である可能性が高いとされています。

現在の状況

切支丹屋敷の跡地の一部には、記念碑と、拷問を受けた信者である八兵衛を生き埋めにしたとされる「夜なき石（八兵衛石）」があります。記念碑の向かい側は、2016年現在、マンションとなっています。記念碑の近くの坂は切支丹坂（幽霊坂）と呼ばれています。坂の位置については諸説ありますが、文京区教育委員会は、記念碑から1ブロック南下した位置から、東方向の地下鉄丸ノ内線ガード下の隧道まで続く坂を切支丹坂としています。

近隣の施設

小石川車両基地
文京区立茗台中学校
文京区立小日向台町小学校
播磨坂
小石川郵便局
切支丹坂
庚申坂
藤坂
荒木坂
蛙坂
釈迦坂
茗荷坂

交通アクセス

東京メトロ丸ノ内線茗荷谷駅から徒歩約6分
東京メトロ有楽町線江戸川橋駅から徒歩約11分
* 都営バス小石川4丁目停留所から徒歩約8分

脚注

カトリック情報ハンドブック2012 巻頭特集

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