初雁 (水雷艇)

初雁（はつかり）の概要

初雁は、日本海軍の水雷艇であり、千鳥型の4番艇として知られています。艦艇の設計・建造は当時の国際状況を反映しており、特にロンドン軍縮条約の影響を受けていました。この条約により、艦船の装備や設計が制限されたため、初雁はミニ駆逐艦とも称されるほど重武装での艤装を行いましたが、同型艇である友鶴が演習中に転覆するという事故、いわゆる友鶴事件が発生したことで、設計が見直されることとなります。

艦歴

初雁の命名は、1932年12月10日でした。1933年4月6日に藤永田造船所にて起工し、同年12月19日に進水しました。しかし、艤装中の1934年3月12日に友鶴事件が発生したため、工事が一時中断されました。この事故を受けて行われた調査によって、千鳥型水雷艇に設計上の復原性不足が指摘され、設計の改訂が必要となります。この改訂後、工事は再開され、1934年7月15日に竣工を迎えました。その後、佐世保鎮守府に配属され、第21水雷隊に編入されました。

1935年9月、第四艦隊事件が勃発し、千鳥型水雷艇も改善工事が行われることになりました。具体的な内容は明らかではありませんが、他艦に比べ大きな問題にはならなかったとされています。しかし、速度は27ノット程度に低下したとされています。このような変遷を経て、初雁は1936年12月に第21水雷隊の同型艇4隻で編成され、中国方面での上陸支援や封鎖作戦に従事しました。

太平洋戦争が開戦すると、初雁は南方攻略作戦の支援活動を行い、1942年3月から4月には西部ニューギニア戡定作戦にも参戦しました。戦争後期には船団護衛に従事するなど、活躍を続けましたが、終戦時には香港に所在しました。その後、1947年5月3日に除籍され、1948年には香港で解体されました。

歴代艇長

艦船の指揮を執った歴代の艇長は以下の通りです：

• - 艤装員長 柳川正男 少佐：1934年1月11日 -
• - 水雷艇長 柳川正男 少佐：1934年7月15日 - 1935年7月18日
• - 隈部伝 少佐：1935年7月18日 - 1936年12月1日
• - 杉谷永秀 少佐：1936年12月1日 - 1938年5月20日
• - 南六右衛門 少佐：1938年5月20日 - 1938年12月15日
• - 井上磯次 少佐（兼）：1938年12月15日 - 1939年10月5日
• - 田岡清 大尉：1939年10月5日 - 1940年3月1日
• - 山名寛雄 少佐：1940年3月1日 - 1940年10月15日
• - 森岡昌雄 大尉：1940年10月15日 - 1941年8月20日
• - 中尾九州男 大尉：1941年8月20日 -

参考文献

• - 国立国会図書館デジタルコレクション
• - 海軍大臣官房『海軍制度沿革. 巻8』海軍大臣官房、1940年。
• - 雑誌「丸」編集部『写真 日本の軍艦 第11巻 駆逐艦Ⅱ』光人社、1990年。ISBN 4-7698-0461-X
• - 雑誌「丸」編集部『ハンディ判 日本海軍艦艇写真集21巻』哨戒・護衛艦艇 海防艦・水雷艇、光人社、1998年。
• - 日本造船学会『昭和造船史 第1巻』原書房、1981年、第3刷。ISBN 4-562-00302-2
• - 福井静夫『福井静夫著作集第5巻 日本駆逐艦物語』光人社、1993年。ISBN 4-7698-0611-6
• - 福井静夫『福井静夫著作集第10巻 日本補助艦艇物語』光人社、1993年。ISBN 4-7698-0658-2
• - 『写真日本海軍全艦艇史 Fukui Shizuo Collection』資料篇、KKベストセラーズ、1994年。
• - 『丸スペシャル』第39号 水雷艦、潮書房、1980年。
• - 海軍歴史保存会『日本海軍史』第7巻、第一法規出版、1995年。

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