利器

利器とは

利器とは、一般的に鋭利な刃物や武器を指す言葉ですが、考古学においては、金属製のもの（金属器）に限らず、石製のもの（石器）も含まれます。ここでは、利器の変遷について詳しく解説します。

利器の変遷

旧石器時代

利器の始まりは、前期旧石器時代の握槌（ハンドアックス）です。握槌は、狩猟、解体、伐採など、多目的な用途で使用されました。

3万年前頃になると、石斧が定型化し、柄が取り付けられるようになります。また、刃先を磨いた局部磨製石斧も登場しました。石斧もまた、大型獣の狩猟や解体、木の伐採や切断、土掘りなど、多用途に使用された石器です。

さらに、石刃技法の誕生により、片刃のナイフ形石器が出現しました。これは、後期旧石器時代を特徴づける石器となります。

この後、皮なめしの道具である掻器（スクレイパー）や、槍先として使われた両刃の尖頭器（ポイント）など、用途別に様々な石器が出現しました。旧石器時代の末葉には、替刃式の石器である細石刃（マイクロリス）が現れます。

縄文時代

縄文時代に入ると、弓矢の使用に伴い石鏃が登場します。また、定住生活の普及に伴い、携帯ナイフである石匙や、携帯ドリルである石錐なども使われるようになりました。

金属器時代

金属器の使用が始まると、鋤や鍬などの鉄製農具も加わります。従来狩猟のために用いられた利器が、武器として用いられることも増えました。しかし、考古学者の佐原眞氏が行った石鏃と鉄鏃の比較実験では、石鏃の利器としての性能は、決して鉄鏃に劣るものではないことが示されました。

材料工学的な観点から見ると、金属器には石器にはない靭性と弾力性という優位性があります。しかし、硬度だけでは双方の優劣を判断することはできません。実際、金属を上回る硬度を持つ鉱物は多数存在します。例えば、モース硬度で言えば、ガラス（石英）は鋼鉄よりも高い数値を示します。

利器の例

日本刀やドイツのゾーリンゲンの刃物は、利器としての品質に優れた鉄製品として知られています。

文明の利器

「文明の利器」という表現における「利器」は、「利」の文字が「と・き」（鋭・き）という意味を持つことから転じて、「使い勝手の良い、優れたもの」という意味で用いられます。なお、対義語である「鈍器」には、このような用法は存在しません。

関連項目

考古学
考古資料
遺物
打製石器
金属器
狩猟
武器
農具
工具
文明

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