前田秀継

前田 秀継（まえだ ひでつぐ）

戦国時代に生きた武将。前田利春の六男として生まれ、戦国大名・前田利家の弟にあたります。母は長齢院（竹野氏の娘）。加賀国津幡城、越中国今石動城、そして越中国木舟城の城主を務めました。

生涯

秀継の武将としてのキャリアは、天正3年（1576年）、兄・利家より越前府中で1000石を拝領したことから始まります。この時の知行高は、前田家の重臣である前田安勝や青山吉次と並ぶものであり、前田家家中では最も高禄を与えられていた一人でした。

天正11年（1583年）には、加賀国の津幡城の守将に任じられ、7000石の領地を得ます。この頃から、前田家と隣国の越中国を治める佐々成政との間で緊張が高まり始め、両勢力は加賀・越中国境付近に多数の城砦を築いたり、既存の城郭を改修したりして対立姿勢を強めます。この防衛ラインは国境を越えて前田領である加賀国内にも食い込み、後には津幡城のすぐ近くにまで佐々軍の勢力が迫る事態となります。以降、秀継は天正地震で命を落とすまでの数年間、常に佐々成政との戦いにおける最前線指揮官としての重責を担うこととなります。

天正12年（1584年）、佐々成政軍が能登国の末森城を攻撃した「末森城の戦い」では、救援に向かう利家の軍勢を自身の津幡城に迎え入れ、軍議にも参加しています。また同年には、嫡男の前田利秀と共に越中国境に位置する倶利伽羅峠の防衛拠点であった龍ヶ峰城を攻略し、佐々平左衛門を敗走させるという戦果を挙げています。

天正13年（1585年）4月、秀継は津幡から越中攻略の重要な拠点として新たに築かれた今石動城へと移り、入城します。翌月5月には、佐々軍およそ5000の兵が今石動城へと攻め寄せる「今石動合戦」が勃発します。秀継は寡兵でありながらも、嫡男利秀と共に堅固に今石動城を守り抜き、援軍が到着するまでの間、佐々軍の猛攻を持ちこたえました。この籠城戦では、敵将である神保氏張や佐々平左衛門らを退けるという見事な軍功を立てています。この功績により、天下人・豊臣秀吉から黄金100両と御道服を褒美として授けられたと伝えられています。

同年8月8日、豊臣秀吉は10万の大軍を率いて佐々成政の討伐に向かいます。そして同月28日、成政が降伏したことで越中平定が完了しました（富山の役）。この結果、利家は新たに越中三郡を与えられ、秀継は越中国の木舟城主に任じられ、4万石の広大な領地を治めることとなります。しかし、同年11月29日に発生した天正地震により、木舟城は無残にも全壊。秀継は夫人と共に城の下敷きとなり、圧死するという悲劇的な最期を遂げました。その遺領は子の利秀が継承しました。なお、秀継は天神を深く信仰していたことでも知られています。

人物・逸話

前田利家は、兄弟の中でも秀継と特に親密な関係であったようです。賤ヶ岳合戦の直後には、利家が秀継の安否を気遣い、無事を知って心底喜んだという記録が残されています。また、利家は秀継の意見をよく聞き入れたとも伝えられています（『村井寛十郎覚書』）。
天正大地震による木舟城の崩壊と秀継の死については、秀継が木舟明神の御神体を城の濠に投げ入れたことによる神罰である、という伝承が残されています。
越中国氷見（現在の富山県氷見市）の商人、田中屋権右衛門が書き残した日記『応響雑記』には、前田利家や前田利常だけでなく、前田秀継と前田利秀父子の二百五十回忌供養を営んだことが記されており、秀継が地元の人々にとって記憶される存在であったことを示唆しています。

演じた人物

菅原加織（NHK大河ドラマ「利家とまつ〜加賀百万石物語〜」、2002年） - 少年期は内山昂輝が演じました。

関連項目

* 小矢部市（木舟城跡の所在地）

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