前田重教

前田 重教（まえだ しげみち）

加賀藩の第9代藩主である前田重教は、金沢に生まれ育ち、前田家の中でも特に著名な人物の一人です。本記事では、彼の生涯や業績について詳しく探ることにしましょう。

来歴

重教は寛保元年（1741年）に金沢で誕生しました。出生時は加賀藩の年寄である村井長堅の養子に出される予定でしたが、宝暦3年（1753年）に藩主の異母兄・重靖の命により、その約束は解消されました。重靖が病死した際、後継者として藩主の地位に予定されていた重教は、急ぎ江戸に向かおうとしましたが、麻疹にかかってしまい、出発することができませんでした。この健康問題は藩の運営に大きな影響を及ぼし、多くの議論を呼びました。

重教は同年の10月に重靖の後を継ぎ、家督を相続することとなります。10月15日に名を利篤に改め、松平の名字を授けられた彼は、翌年には将軍徳川家重に御目見を果たし、正式に加賀藩の主となりました。この時、加賀藩は様々な政治的難題に直面しており、藩主の頻繁な交代が藩政に悪影響を与えていました。

加賀藩の困難と重教の対応

重教が藩主に就任した後も、加賀藩は加賀騒動の余波が続いていました。藩主の交代が頻発した結果、財政の悪化や藩政の停滞が深刻化し、藩民たちにも大きな影響を与えました。特に宝暦9年（1759年）の大火では、金沢城などが焼け、1万5百戸以上が失われる惨事に見舞われ、急遽幕府から金5万両を借りる事態に陥ります。

それでも重教は藩政の安定に努め、能狂言の普及にも力を入れました。彼自身も囲碁や将棋を愛好し、隠居後には安永8年（1779年）に将棋と囲碁の愛好者を招待する通知を出すなど、文化活動も推進しました。

隠居と晩年

明和8年（1771年）、重教は異母弟の治脩に家督を譲り隠居生活に入りましたが、その後も息子たちが治脩の養子となり、名家を継承することとなります。重教は晩年に行った囲碁や将棋の対局を通じて、家臣たちとの絆を深めていたと伝えられています。

天明6年（1786年）に46歳でこの世を去った重教。金沢市にある全性寺には、彼の生母が安産祈願のために寄進した不動明王が祀られています。このように、重教の人生は文化面でも藩の枠を越えた影響を残したものとなりました。

系譜

重教は前田吉徳を父に持ち、母は流瀬（実成院）という側室でした。正室は紀伊藩主徳川宗将の娘・千間姫で、他にも数人の側室を持ちました。子には長男の斉敬、次男の斉広などがいて、斉広は加賀藩の第11代藩主となります。このように、重教の家庭環境もまた、彼の政権と文化的影響を広げる要因となりました。

重教の人生は、厳しい藩政の中でいかにして文化と地域の発展に寄与したかを示す貴重なものです。

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