劇団くるみ座

劇団くるみ座：京都新劇史に輝く足跡

1946年から2007年まで、京都を拠点として活躍した劇団くるみ座。その歴史は、日本の演劇史、特に京都における新劇の歴史において重要な位置を占めています。劇団民芸、文学座、俳優座といった老舗劇団と肩を並べる歴史を持ち、京都市における新劇団としては最も古い歴史を誇ります。

劇団の創設は、毛利菊枝氏と演出家の竹中荘吉氏によってなされました。毛利氏は東京の喜劇座や築地座に所属し、著名な劇作家である岸田國士氏に師事した経験を持つ人物でした。夫の京都大学赴任を機に京都に移り、そこで劇団を設立したのです。

初期のレパートリーは、劇作派の戯曲が中心でした。岸田國士、田中千禾夫、田中澄江、森本薫といった当時の著名な劇作家の作品が、積極的に上演されました。創立とほぼ同時に俳優で演出家の北村英三氏が参加。毛利氏や北村氏の演出の下、チェーホフ、ストリンドベリ、シェイクスピアといった海外の古典作品も多く取り上げられました。翻訳劇の上演にも積極的に取り組み、多様な演劇表現に挑戦したことがわかります。

1950年代から1960年代にかけては、山崎正和、人見嘉久彦、徳丸勝彦といった、後に重要な劇作家となる人材を輩出しました。これらの人々が劇団で経験を積み、成長していったことは、劇団くるみ座の大きな功績と言えるでしょう。また、時代を先取りするかのように、イヨネスコ、ベケット、ピンターといった作家の不条理劇も数多く上演。実験的な演劇にも積極的に取り組んでいたことがうかがえます。

劇団には、中畑道子、広瀬正志、仲村秀生、栗塚旭、松村康世、多賀勝、玉生司朗、小沢寿美恵、北村英三、入江慎也、重久剛一、宮腰勉、平辻朝子、関えつ子など、多くの個性豊かな俳優たちが所属していました。1960年代には数十名規模の劇団員を抱えるまでに成長しましたが、1970年代以降は新劇人気低迷や演劇界の中心が東京に集中するといった状況の影響を受け、劇団員数は徐々に減少していきました。

2006年には劇団員は3名まで減少。代表の中口恵美子氏を中心に、京都市左京区の稽古場で年2回の公演を続けていましたが、2007年3月末をもって、惜しまれつつも解散することとなりました。

劇団の解散に際しては、貴重な舞台資料が大阪大学に寄贈されました。台本、舞台写真、衣装デザイン図、舞台配置図、ポスター、チラシなど、劇団くるみ座の歴史を伝える数多くの資料が、大阪大学総合学術博物館に収蔵され、現在も保存・公開されています。これらの資料は、日本の演劇史研究において貴重な資料となるでしょう。劇団くるみ座の活動は、その歴史的意義とともに、後世に長く記憶されるべきものです。

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