劉信 (厳郷侯)

劉信（りゅう しん）

劉信は、前漢時代末期に生きた人物です。彼の祖父は東平思王・劉宇であり、父は東平煬王・劉雲でした。劉信には、東平王劉開明や武平侯劉璜といった兄弟がいました。

新代から後漢初期にかけて活躍し、光武帝によって汝陰侯に封じられた劉信という同名の人物がいますが、ここで解説するのは別人です。

事績

紀元前5年、父である東平王・劉雲から領地の一部を与えられ、厳郷侯となりました。前漢末期、平帝が崩御し、王莽が政治の実権を握ると、東郡太守であった翟義は王莽を憎み、劉信とその弟である武平侯・劉璜、東郡都尉の劉宇らと共謀して王莽打倒を計画しました。

7年9月、彼らはついに兵を挙げ、王莽打倒を宣言しました。劉信は天子として擁立され、翟義を大司馬・柱天大将軍に、蘇隆を丞相に、皋丹を御史大夫にそれぞれ任命しました。劉信と翟義らは、各郡国に檄を飛ばし、王莽が毒酒を用いて平帝を殺害したと訴えました。翟義の軍勢は、山陽郡に至るまでに10数万人に膨れ上がりました。また、三輔の槐里（現在の右扶風）では、趙明・霍鴻らが呼応して蜂起し、各地で略奪を繰り返しながら長安へと迫りました。

王莽は翟義の反乱を知り、大きな衝撃を受けました。彼は、孫建・王邑・王駿ら7人の将軍を派遣し、劉信と翟義の討伐を命じました。孫建と王邑らは、まず甾（現在の梁郡）で翟義軍を打ち破り、劉璜を斬首しました。さらに進軍して圉（現在の陳留郡）を包囲し、翟義軍を殲滅しました。劉信と翟義は包囲を突破して逃走しましたが、翟義は固始（現在の汝南郡）の県境で王莽軍に捕らえられ、磔刑に処されました。劉信も、その後の詳しい消息は不明ですが、間もなく死亡したとされています。

翌8年2月には、三輔で蜂起した趙明・霍鴻らも鎮圧され、わずか数ヶ月で王莽に対する反乱は完全に鎮圧されました。

劉信の反乱は短期間で鎮圧されましたが、王莽に対する不満が各地で燻っていたこと示す出来事でした。王莽の簒奪に対する正当性を揺るがし、後の後漢の成立へと繋がる、漢朝復興の機運を高める一因となりました。



参考文献
『漢書』巻15下 王子侯表下
『漢書』巻84 列伝54付・翟義伝
* 『漢書』巻99上 列伝69上 王莽伝上

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