劾里鉢

劾里鉢（ヘリンボ）

劾里鉢（ヘリンボ）は、後に金朝（1115年 - 1234年）を打ち立てた女真（ジュシェン）人の有力氏族、完顔（ワンヤン）氏の族長です。彼は烏古廼（ウクナイ）の次男として生まれました。祖父の石魯（シル）と同様に、10世紀から11世紀にかけて中国北部を支配した契丹（キタン）人主導の遼王朝によって、完顔氏の族長に任命されました。劾里鉢は、金の初代皇帝である太祖阿骨打（アクダ）と、第2代皇帝である太宗呉乞買（ウキマイ）の父にあたります。

第3代皇帝である熙宗合剌（ホラ）が即位した後、劾里鉢には「聖粛皇帝」という諱号と、「世祖」という廟号が贈られました。皇統4年（1144年）には、彼の埋葬された墓所が「永陵」と称され、皇統5年（1145年）には「世祖 神武聖粛皇帝」と追贈されました。海陵王テクナイの時代には「元祖 大聖皇帝」と改められましたが、その後、世宗烏禄（ウル）によって元の称号に戻されました。

生涯

父である烏古廼（ウクナイ）は、生女真の諸部族を統一する上で重要な役割を果たした人物でした。烏古廼は次男である劾里鉢の勇敢な気質を愛し、その子孫が金朝の統治者の地位を占めることになりました。女真の慣習では、子供たちが成長すると別の宮殿に移り住む必要がありましたが、烏古廼は長男の劾者（ヘテェ）と次男の劾里鉢に邸宅を共有させました。劾者には家政の責任を全て負わせ、劾里鉢には主に外交や軍事などの外事を担当させました。このことが、劾者の子である撒改（サガイ）が長期にわたって国論勃極烈（国論忽魯＝グルンフル、「国務総理」に相当）の職にあり、撒改の子である粘没喝（ネメガ）が国論移賚に任じられる一方で、劾里鉢の息子である阿骨打と呉乞買が金の皇帝として君臨する要因となりました。

家族

両親:
父：烏古廼（ウクナイ）
母：唐括氏（死後に昭粛皇后として名誉を贈られた）
配偶者:
翼簡皇后 拏懶（ナラン）氏（1085年没）
息子:
長男：康宗 烏雅束（ウヤス）（1061年 - 1113年）
次男：太祖 阿骨打（アクダ、漢名は旻）（1068年 - 1123年）
三男：魏定粛王 斡帯
四男：太宗 呉乞買（ウキマイ、漢名は晟）（1075年 - 1135年）
五男：遼智烈王 斜也（シエ、漢名は杲）（1130年没）
側室:
徒単氏：六男 衛王 斡賽、七男 魯王 斡者
僕散氏：八男 漢王 烏故乃
朮虎氏：九男 呉荘襄王 闍母（1090年 - 1129年）、十男 沂王 査剌（1149年没）
烏古論氏：十一男 鄆王 吾都補（ウトゥブ、漢名は昂）（1142年没）

参考文献

Jing-shen Tao (1976). The Jurchen in Twelfth-Century China. University of Washington Press. ISBN 0-295-95514-7
トクト (1343) (中国語). 金史. 1, 32, 63, 65
* 河内良弘「内陸アジア世界の展開I 2 金王朝の成立とその国家構造」『岩波講座 世界歴史9 中世3』岩波書店、1970年2月。

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