勇み足

勇み足（いさみあし）

相撲用語の一つで、攻めている力士が相手よりも先に土俵の外に足を踏み出してしまうことを指します。これは決まり手としては扱われず、非技または勝負結果として扱われます。

概要

具体的には、押しや寄りで相手を土俵際まで追い詰めた際に、攻めている側の力士が勢い余って先に土俵を割ってしまう状況です。ただし、例外も存在します。

送り足: 相手を土俵の外に吊り出す形で自分の足が土俵外に出ても、相手の体を先に土俵外に降ろせば「送り足」として負けにはなりません。
かばい足: 相手力士が体勢を崩し、いわゆる「死に体」である場合、多少早く足を踏み越しても「かばい足」として負けにならないことがあります。ただし、「送り足」は規則に明記されているのに対し、「かばい足」は成文化された規則にはありませんが、事実上の了解として定着しています。

単に「踏み越し」とも呼ばれ、相手の攻めによって土俵を割ってしまうことは「踏み切り」と言って区別されます。同じ取組でも、「踏み切りあり」と「踏み越しあり」では勝敗が異なることになります。

慣用句としての用法

相撲用語としての意味から転じて、他の競技や日常生活においても、調子に乗って失敗したり、余計なことに深入りして失敗することを指す表現として用いられるようになりました。例えば、競艇のフライングや政治家の失言などが挙げられます。また、安易な考えが裏目に出るような状況を指す場合にも使われます。

勇み足による金星

横綱と平幕の対戦において、横綱が勇み足で負けた場合、平幕力士は金星を得ます。ただし、不戦勝や反則勝ちは金星にはなりません。昭和30年以降、横綱の勇み足による金星は非常に稀で、以下の4例しかありません。

1. 昭和31年3月場所8日目：東前頭筆頭 琴ヶ濱が東張出横綱 栃錦に勝利
2. 昭和33年1月場所3日目：西前頭2枚目 岩風が西張出横綱 千代の山に勝利
3. 昭和47年3月場所7日目：西前頭筆頭 貴ノ花が東横綱 北の富士に勝利
4. 平成26年11月場所3日目：東前頭3枚目 髙安が東横綱2枚目 日馬富士に勝利

有名な勇み足の例

昭和13年1月場所9日目 双葉山 - 両国: 双葉山の69連勝がかかった一番。双葉山が寄り倒しましたが、大きく足を踏み越しており、物言いがつきました。取り直しの末に双葉山が勝利しましたが、もし勇み足が認められていれば、69連勝は48連勝で止まっていた可能性もありました。
平成6年1月場所千秋楽 貴ノ花 - 武蔵丸: 優勝を争う一番。土俵際で体を入れ替えた武蔵丸が浴びせ倒し気味に寄り倒しましたが、大きく足を踏み越してしまいました。これにより貴ノ花の優勝が決定しましたが、貴ノ花も体勢を大きく崩しており、議論を呼びました。勇み足による優勝決定は史上初の出来事でした。

踏み越しについて

勇み足は古くは「踏み越し」とも呼ばれていました。公式な決まり手体系が制定される以前はこちらの用語が主流でした。「踏み越し」として記録・報道された取組は多数存在しますが、ここでは横綱・大関が登場した取組（一方が関脇以下の場合も含む）で記録された例のみを以下に示します。

昭和2年1月場所9日目：能代潟－常ノ花
昭和3年10月場所千秋楽：常陸岩－豊國
昭和5年3月場所10日目：能代潟－玉錦
昭和6年1月場所千秋楽：能代潟－常陸岩
昭和7年10月場所9日目：幡瀬川－能代潟
昭和8年5月場所8日目：武藏山－清水川
昭和14年5月場所2日目：前田山－笠置山
昭和15年1月場所7日目：笠置山－羽黒山
* 昭和16年5月場所12日目：前田山－枩浦潟

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