動物兵器

動物 兵器：歴史と事例

古来より、人類は戦争において動物を兵器として、あるいは兵器と同様の役割を担わせる存在として利用してきました。その歴史と事例について、多角的に考察します。動物を単に軍用動物と捉えるか、兵器と捉えるかは主観的な問題ですが、本稿では特に動物単体で攻撃を行うものを「アニマルウェポン」と定義し、解説を進めます。

哺乳類

ウマ科

馬: 馬は家畜化が容易で、古くから騎乗や物資輸送に利用されてきました。騎兵隊による機動戦術は、アレクサンドロス大王やハンニバルなどの将軍によって用いられ、戦況を大きく左右しました。馬の高速性は、伝令や連絡手段としても有効に活用されました。また、馬具の発達により、乗馬技術は向上し、非騎馬民族も騎兵隊を組織できるようになりました。現代では、儀典や山岳地帯での限定的な運用にとどまっています。

ロバ・ラバ: ロバやラバは、馬よりも小型で運搬能力は劣りますが、強健で粗食に耐えるため、砲兵隊の物資輸送などに広く用いられてきました。特に山岳地帯での運用に適し、ナポレオンもアルプス越えで使用したと伝えられています。現代でも山岳地帯での輸送や、近年では爆弾を積んでの自爆攻撃（ロバ爆弾）といった過激な事例も報告されています。

シマウマ: シマウマは気性が荒く家畜化は困難ですが、アフリカ睡眠病に強いことから、19世紀末から20世紀初頭にかけて、一部で軍や警察の騎馬隊に利用されました。しかし、自動車の普及により、すぐにその役割を終えています。

ウシ目

ラクダ: ラクダは乾燥地帯や山岳地帯での輸送に適し、その積載能力と耐暑性から、古くから軍事的に利用されてきました。鞍の発達によって騎乗戦闘も可能となり、アラブ地域ではラクダ騎兵が主流となりました。モンゴル帝国やヨーロッパ諸国、日本軍もラクダ部隊を運用した記録が残っています。現代でも砂漠地帯のパトロールなどに使われています。

ウシ: ウシは、古くから物資輸送に用いられてきました。戦闘にも使用された例があり、牛の角に武器を取り付け、敵陣に突入させる戦術があったと伝えられています。しかし、その信頼性は低いとされています。第二次世界大戦のインパール作戦では、食糧確保と物資輸送のためにウシが利用されましたが、これは作戦の失敗要因の一つとも指摘されています。

イヌ科

犬: 犬は高い学習能力と嗅覚を活かし、捜索、警備、追跡など様々な用途で軍民問わず利用されてきました。現代においても軍用犬として活躍しており、海上自衛隊や航空自衛隊では階級が与えられている部隊もあります。地雷犬として、信管付き爆薬を背負わせて敵車両を破壊する試みもあったものの、自軍への被害も大きかったため、実用化には至りませんでした。

鳥類

鳩: 鳩は優れた帰巣本能を利用した伝書鳩として、古くから通信手段として用いられてきました。無線[[通信]]技術の未発達な時代には、最速の通信手段でしたが、現代ではその役割は小さくなっています。

タカ: 日露戦争や第二次世界大戦において、タカは伝書鳩を捕獲する目的で利用された事例があります。現代では、海鳥の駆除などに用いられています。

ニワトリ: 冷戦時代のイギリスでは、核地雷の電子部品をニワトリの体温で温め、故障を防ごうという計画がありましたが、核地雷の配備中止により実現しませんでした。

海獣

イルカ: イルカは高い知能と水泳能力から、機雷探知などの哨戒活動に利用されています。

アシカ: アシカはイルカよりも小型で、甲板への昇降が容易なため、運搬や装備の変更に適しています。

その他

象: 象は、その巨体による突進を活かして戦場に投入されましたが、火器に弱く、大型ゆえに標的になりやすいため、使用していた国々の没落とともに戦場から姿を消しました。

コウモリ: 第二次世界大戦時、アメリカ軍はコウモリに小型爆弾を装着して日本を空襲しようという計画を立てました。一定の成果は得られたものの、実戦配備には至りませんでした。

ブタ: 古代ローマでは、戦象への対抗策として、油を塗って火をつけた豚を敵陣に放つ戦術があったとされています。

ネズミ: アメリカ軍では、災害救助に利用するため、脳にスティモシーバーを埋め込み、遠隔操作できるネズミの研究が行われています。また、第二次世界大戦中には、ネズミの死骸に爆弾を仕掛けて敵陣に送り込む計画もありました。

ネコ: CIAでは、ネコに盗聴器を埋め込み、スパイ活動を行う計画があったとされています。

軍のマスコット

様々な動物が、世界中の軍隊でマスコットとして公式に登録され、階級が与えられている事例があります。イギリス軍のディッキンメダルは、動物に授与される勲章です。

様々な動物が、軍事において様々な役割を果たしてきました。その歴史を理解することは、現代社会を考える上で重要な視点となるでしょう。動物兵器という概念は、倫理的な問題を含みますが、歴史的な事実として、客観的に理解する必要があります。

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