勝氏

勝氏（かつ/すぐり/すぐろ し）について

勝氏は、日本の古代から存在する氏族、また姓の一つです。そのルーツは一つではなく、複数の系統が存在することが特徴です。

出自と系統

勝氏の出自は、主に以下の三つの系統に分類されます。

1. 百済系
百済からの帰化人にルーツを持つとされ、西文氏（かわちのふみうじ）の末裔とされています。
大和の勝氏は、西漢氏の庶家とも言われ、勝海舟の家系はこの系統に属すると考えられています。
2. 秦氏系
因幡、讃岐、紀伊、伊勢、駿河などでは、秦氏と同族であるとされています。
岸俊男は、秦氏の中に「…勝」と称する氏族が存在することを指摘しています。
伊藤信博も、勝氏を秦氏と同族と見ています。
3. 物部氏系
近江の勝氏は、物部姓の系統であると伝えられています。
寛政重修諸家譜の勝氏系図によると、物部尾輿の末裔である近江国坂田郡勝村の勝冠者季時の後裔、市郎左衛門時直を祖としています。

勝氏と勝海舟

勝氏の中でも特に有名な人物が、幕末から明治にかけて活躍した勝海舟です。

勝海舟の家系は、物部氏系の流れを汲みます。
勝命雅（市郎右衛門）の代に、鉄砲玉薬同心の御家人から材木石奉行となり、旗本に昇格しました。
勝甚三郎元良の婿養子として勝小吉を迎え、その子が勝海舟です。
勝元良の時代の家禄は41俵1斗2合6勺9才2人扶持でしたが、海舟の時代には100俵に加増されました。
勝海舟は幕府軍艦奉行、明治の海軍卿、元老院議官、枢密顧問官などを歴任し、明治維新に大きく貢献しました。
明治20年（1887年）には、維新の功により勲功華族として伯爵に叙されました。
海舟は徳川慶喜の十男、精を養子とし、伯爵位を継がせました。
精は、オリエンタル写真工業、浅野セメント、石川飛行機製作所などの重役を務めました。
3代伯爵勝芳孝の時代には、勝伯爵家の邸宅は東京市赤坂区氷川町にありました。

その他の系統

清和源氏の村上氏、武田氏、藤原北家道兼流、賀茂姓の本多氏、桓武平氏北条氏など、様々な系統の異流も存在すると伝えられています。

分布

勝姓は、摂津、和泉、山城、備前、美濃、出雲などに多く見られます。
その他の地域については、上記の出自と系統を参照してください。

勝部（かつべ）

勝部は、元々は帰化人を組織した品部であり、勝氏が支配していました。
後世の氏族がこの部名を名乗るのは、地名の勝部に由来すると考えられています。

関連する氏族

西漢氏
秦氏
川勝氏
塔勝氏

関連する人物

勝栄二郎：財務省事務次官。勝海舟とは血縁関係ではありません。
勝茂夫：世界銀行副総裁。勝栄二郎の弟。
勝呂誉：俳優。本名であり、古代音「すぐろ」を残しています。

まとめ

勝氏は、その出自や系統が多岐にわたる、歴史ある氏族です。特に、幕末の動乱期に活躍した勝海舟の存在は、この氏族の名を広く知らしめました。勝氏の歴史は、日本の歴史と深く結びついており、その多面的な側面を理解することは、日本史をより深く理解する上で重要です。

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