北京原人の逆襲

『北京原人の逆襲』：巨大猿人ペキンマンが香港を襲う！

『北京原人の逆襲』は、香港のショウ・ブラザーズが製作し、1977年に公開された特撮映画です。日本では1978年に公開されました。この作品は、ヒマラヤで目覚めた巨大な猿人「ペキンマン」が、香港を舞台に大暴れするという、迫力満点のアクションアドベンチャーです。

ストーリー

興行師ルーは、ヒマラヤ奥地で発生した地震の影響で眠りから目覚めた巨大な猿人「ペキンマン」を香港に連れてくることを企てます。彼は、冒険家チェンと共に捜索隊を編成し、ヒマラヤ奥地を目指しますが、道中、猛獣の襲撃や底なし沼、断崖絶壁など、数々の困難に遭遇します。多くの隊員が命を落とす中、ルーは逃げ出してしまいます。一方、密林で彷徨っていたチェンは、ヒョウさえ手懐ける美女アウェイと出会い、やがてペキンマンと遭遇します。チェンとアウェイは互いに惹かれあい、ペキンマンは香港へと連れてこられることになります。

製作の背景

1975年当時、リメイク版『キングコング』（1976年）の話題が香港映画界にも届いていました。かねてから「香港でもキングコングをやりたい」という願望を持っていたショウ・ブラザーズは、対抗意識を燃やし、本作の製作を決定します。1975年1月に準備が始まり、1976年6月にクランクイン。2年2ヶ月をかけて完成しました。制作費は500万ドル（当時の日本円で約8億円強）にものぼり、そのほとんどが日本人特撮スタッフのギャラだったといわれています。

特撮技術

本作の特撮は、日本人スタッフが中心となって担当しました。きっかけは、香港映画『蛇王子』（1975年）で日本の造形会社が巨大な蛇の造形を担当したことでした。この時の縁で、プロデューサーのチャイ・ランから「キングコングのような特撮映画を一緒に作ってほしい」と依頼があり、村瀬継蔵が香港に招かれました。

当初、村瀬は『大魔神』のスタッフに特撮を依頼しましたが、造形物がキングコングに似すぎているという問題が発生し、版権の問題で製作が中断します。その後、村瀬は東宝のスタッフに協力を依頼し、有川貞昌、川北紘一ら東宝の特撮スタッフが香港に集結します。彼らは、清水灣のショウ・ブラザーズ撮影所で126日間かけて特撮シーンを制作しました。

村瀬は、原人の造形、ミニチュア制作、アクション指導、特殊効果など多岐にわたる役割を担い、スタッフの食事の世話までしました。ミニチュアは、香港の美術スタッフが精巧に作り上げました。特に、村落の巨大な仏像は、左官屋が短時間で制作したと言われています。ミニチュアの制作には、130個のミニチュアのために延べ2万6千人以上を動員し、1億円以上の費用がかけられました。

北京原人の造形

ペキンマンは、50万年前の原始猿人が巨大化したという設定で、身長25m、体重30tという巨大な体躯を持ちます。当初はキングコングに似た造形でしたが、版権問題からデザイン変更を余儀なくされました。村瀬は、雪男風の造形など様々なアイデアを試行錯誤し、最終的に山羊の毛を使った仙人のような顔つきの原人に落ち着きました。その後、撮影中に体毛が抜けやすいという問題が発覚。そこで村瀬は、香港市民に髪の毛の提供を呼びかけ、集まった人毛を体毛に使用するという画期的なアイデアを実現させました。

３体分のぬいぐるみの他に、実物大の胸や腕も制作され、アクションシーンでは、クレーンで操作されました。顔面はラバー製のマスクで、口の開閉などの表情は機械仕掛けで表現しました。

ラストシーンでは、炎に包まれたペキンマンがビルから転落するシーンがありましたが、危険なスタントを嫌がるスタントマンを説得し、村瀬自らがスタントを演じました。このシーンの撮影後、ショウ・ブラザーズの社長は村瀬に金時計を贈呈したそうです。

登場兵器

作中には、イギリス軍の兵器が登場します。具体的には、FV603 サラセン装甲車、SA 316 アルエットIIIヘリコプター、UH-1 イロコイヘリコプターなどが使用されています。

キャスト

主人公のチェン・チェンフォン役を演じたのはダニー・リーです。彼は、1980年代の香港映画で数々の刑事作品に主演し、警官役の代名詞となりました。ヒロインのアウェイ役を演じたのは、スイス国籍の女優イヴリン・クラフトです。彼女は『レディ・ドラキュラ』などにも出演し、その美貌とアクションで人気を博しました。撮影中に太ってしまい衣装が合わなくなるというハプニングもありましたが、プロ根性で乗り切ったそうです。イヴリン・クラフトは、2009年に心臓発作で亡くなっています。

日本語吹替版

日本では、1979年2月2日に『ゴールデン洋画劇場』で初放送されました。声優には、堀勝之祐、武藤礼子、坂井すみ江、羽佐間道夫、野島昭生、田口計、大平透などが参加しました。

DVD

2004年にはDVDが発売され、日本語吹替版の他、村瀬継蔵によるオーディオコメンタリー、メイキングドキュメンタリーなどが収録されています。

まとめ

『北京原人の逆襲』は、香港映画界がキングコングに対抗して製作した意欲作であり、日本人スタッフの特撮技術が光る作品です。巨大な猿人が香港で暴れまわるという迫力満点の内容で、今なお多くのファンを魅了しています。ぜひ、その迫力を体感してください。

もう一度検索