北斉書

『北斉書』（ほくせいしょ）は、唐代の歴史家である李百薬（りはくやく）によって編纂された、中国の南北朝時代における北斉王朝の歴史を記した紀伝体の歴史書です。二十四史の一つに数えられ、北斉の正史として重要な位置を占めています。成立は貞観10年（636年）で、全50巻から構成され、帝紀8巻と列伝42巻に分かれています。

本書の編纂には、李百薬の父である李徳林（りとくりん）が編纂していた『北斉史』が基礎となっています。李徳林の『北斉史』は全27巻で、隋代には38篇に再編されていましたが、李百薬は父の著作に加えて、王邵（おうしょう）が著した『北斉志』などの資料を参考に、詳細な記述を加えて『北斉書』を完成させました。しかし、原本は散逸した部分も多く、後世になって『北史』などの史書で補完が行われています。原本は『斉書』と呼ばれていましたが、南朝の斉の歴史を記した蕭子顕（しょうしけん）の『南斉書』と区別するために、宋代以降に『北斉書』と呼ばれるようになりました。

『北斉書』の特徴として、外国に関する記述がないことが挙げられます。これは、北斉が中国北部を支配していた王朝であり、周辺の外国との交流が少なかったためと考えられています。また、『史通』を著した劉知幾（りゅうちき）は、本書を王邵の『北斉志』や宋孝王（そうこうおう）の『関東風俗伝』よりも劣ると評価しており、後世の歴史家からも評価が分かれるところとなっています。

『北斉書』の内容は以下の通りです。

帝紀

帝紀第一：神武帝（こうぶてい）上
帝紀第二：神武帝下
帝紀第三：文襄帝（ぶんじょうてい）
帝紀第四：文宣帝（ぶんせんてい）
帝紀第五：廃帝（はいてい）
帝紀第六：孝昭帝（こうしょうてい）
帝紀第七：武成帝（ぶせいてい）
帝紀第八：後主（こうしゅ）・幼主（ようしゅ）

列伝

列伝第一：神武婁后（しんぶろうこう）、文襄元后（ぶんじょうげんこう）、文宣李后（ぶんせんりこう）、孝昭元后（こうしょうげんこう）、武成胡后（ぶせいここう）、後主斛律后（こうしゅこくりつこう）、胡后（ここう）、穆后（ぼくこう）
列伝第二：高祖十一王
列伝第三：文襄六王
列伝第四：文宣四王・孝昭六王・武成十二王・後主五男
列伝第五：趙郡王琛（ちょうぐんおうしん）、清河王岳（せいがおうがく）
列伝第六：広平公盛（こうへいこうせい）など
列伝第七：竇泰（とうたい）など
列伝第八：段栄（だんえい）など
列伝第九：斛律金（こくりつきん）など
列伝第十：孫騰（そんとう）など
列伝第十一：賀抜允（がばついん）など
列伝第十二：張瓊（ちょうけい）など
列伝第十三：高乾（こうかん）など
列伝第十四：李元忠（りげんちゅう）など
列伝第十五：魏蘭根（ぎらんこん）など
列伝第十六：孫搴（そんけん）など
列伝第十七：張纂（ちょうさん）など
列伝第十八：薛琡（せつしゅく）など
列伝第十九：万俟普（ばくしふ）など
列伝第二十：元坦（げんたん）など
列伝第二十一：李渾（りこん）など
列伝第二十二：崔暹（さいせん）など
列伝第二十三：王昕（おうきん）など
列伝第二十四：陸法和（りくほうか）など
列伝第二十五：蕭明（しょうめい）など
列伝第二十六：楊愔（よういん）
列伝第二十七：裴譲之（はいじょうし）など
列伝第二十八：邢卲（けいしょう）
列伝第二十九：魏収（ぎしゅう）
列伝第三十：辛術（しんじゅつ）など
列伝第三十一：崔季舒（さいきじょ）など
列伝第三十二：尉瑾（うつきん）など
列伝第三十三：暴顕（ぼうけん）など
列伝第三十四：陽斐（ようひ）など
列伝第三十五：李稚廉（りちれん）など
列伝第三十六：儒林
列伝第三十七：文苑
列伝第三十八：循吏
列伝第三十九：酷吏
列伝第四十：外戚
列伝第四十一：方伎
列伝第四十二：恩倖

このように『北斉書』は、北斉王朝の政治、経済、社会、文化、人物など多岐にわたる情報を網羅しており、北斉史を研究する上で欠かせない史料となっています。また、後世の歴史書編纂にも大きな影響を与えました。

北斉書全文：簡体字

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