二十四史

二十四史とは

二十四史（にじゅうしし）は、中国の歴代王朝の正史として編纂された、計24の歴史書の総称です。その成立は、『史記』に始まり、清代に『明史』が加えられることで、現在の形となりました。これらの歴史書は、中国の歴史を研究する上で、非常に重要な基礎資料となっています。

二十四史成立の背景

- 紀伝体の確立と断代史の登場: 司馬遷の『史記』によって、人物を中心とした記述形式である紀伝体という歴史書の形式が確立されました。その後、班固によって書かれた『漢書』は、特定の王朝のみを扱う断代史という新たな概念を生み出しました。
- 三史の成立: 南北朝時代には、『史記』、『漢書』に『東観漢記』を加えたものを三史と呼ぶようになりました。後に『東観漢記』を改編した『後漢書』と『三国志』が成立し、これらは歴史家の私的な著作物でしたが、王朝によって正史として公認されました。
- 官撰による正史編纂: 唐代に入ると、皇帝の命により官吏が正史を編纂するようになりました。これにより、各王朝の正史が補われ、三史以降の歴史書をまとめて「十史」と呼ぶようになりました。この官撰化によって、歴史記録の保存は徹底されたものの、記述の一貫性や編者の思想が弱まり、史書としての完成度が低下したという指摘もあります。
- 宋代以降の復元と編纂: 南北朝時代の正史は散逸していたため、北宋時代に『北史』や『南史』などから材料を集めて復元されました。その後も、新しい王朝が成立するたびに、前王朝の歴史書が国家事業として編纂されました。ただし、編纂にはタイムラグがあり、例えば『遼史』は金朝滅亡までに完成せず、元朝で『金史』や『宋史』と共に編纂されました。
- 欽定二十四史の成立: 清の乾隆帝の時代には、明代の標準であった二十一史に『明史』、『旧唐書』、『旧五代史』を加えて、欽定二十四史が成立しました。この二十四史は、1739年から1784年までの間に武英殿で刊行されました。

二十四史の変遷と研究

- 善本の探索と影印出版: 1930年代には、上海商務印書館が、張元済の提唱により、日本などから善本を集めて影印した百衲本二十四史を出版しました。特に、三国志の善本は当時中国大陸にはなく、日本の帝室が所蔵していた宋本が影写されました。
- 校訂と出版: 中華人民共和国では、1959年から1965年にかけて、前四史の校点本が中華書局から出版されました。文化大革命で中断しましたが、その後、二十四史と『清史稿』の校点本出版が1977年までに完了しました。2007年からは、修訂作業も開始されています。

二十四史の構成

二十四史は、以下の24の正史で構成されています。

1. 史記
2. 漢書
3. 後漢書
4. 三国志
5. 晋書
6. 宋書
7. 南斉書
8. 梁書
9. 陳書
10. 魏書
11. 北斉書
12. 周書
13. 隋書
14. 南史
15. 北史
16. 旧唐書
17. 新唐書
18. 旧五代史
19. 新五代史
20. 宋史
21. 遼史
22. 金史
23. 元史
24. 明史

二十四史の部分集合

- 三史: 通常は『史記』・『漢書』・『後漢書』を指しますが、『史記』・『漢書』・『東観漢記』を指す場合もあります。
- 四史: 『史記』・『漢書』・『後漢書』・『三国志』を指し、前四史とも呼ばれます。
- 十史: 三史より後の『三国志』から『隋書』までを指します。
- 十三史: 三史と十史を合わせたものを指します。
- 十七史: 十三史に『南史』・『北史』・『唐書』・『五代史』を加えたもので、宋代の標準でした。
- 十八史: 十七史に『宋史』を加えたものを指します。
- 二十一史: 十七史に『宋史』・『遼史』・『金史』・『元史』を加えたもので、明代の標準でした。
- 二十二史: 二十一史に『明史』を加えたものを指します。

二十四史の続編

- 新元史: 1919年に柯劭忞によって編纂されました。
- 清史稿: 1927年に趙爾巽によって編纂されました。

中華民国期には、元史を改めた『新元史』が編纂され、正史に加えられて二十五史とされることもあります。しかし、『新元史』の代わりに『清史稿』を数えて二十五史とする場合もあります。『新元史』と『清史稿』を両方含めて「二十六史」と呼ぶこともあります。

また、中華民国政府が『清史稿』を改訂した『清史』は、中華人民共和国政府からは中国国民党の史観による改悪として認められていません。中華人民共和国では、国家清史編纂委員会が独自の『清史』を編纂中です。

参考文献

- 中国の古典の時代別一覧
- 漢籍電子文獻
- その他、中国史関連の書籍や論文

二十四史は、中国の歴史を理解するための重要な文献です。これらの歴史書を読むことで、古代中国の政治、社会、文化に対する理解を深めることができます。

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