高乾

高乾（こう けん）

高乾（497年 - 533年）は、中国の北魏末期に活躍した軍人・政治家です。字は乾邕（けんゆう）。渤海郡蓨県（現在の河北省）の出身で、北魏の渤海郡太守・東冀州刺史を務めた高翼の長男として生まれました。

生涯

若い頃は素行が悪く、法を犯すこともありましたが、成長するにつれて態度を改め、多くの知識人と交流するようになりました。その才能を見抜いた魏の領軍、元叉（げんさ）に厚遇され、員外散騎侍郎（いんがいさんきじろう）に任官。その後も順調に昇進し、太尉士曹（たいいしそう）や司徒中兵（しとちゅうへい）、員外散騎常侍（いんがいさんきじょうじ）といった要職を歴任しました。

孝荘帝（こうしょうてい）が長楽王であった頃から、高乾はその才能を高く評価されていました。528年に爾朱栄（じしゅえい）が洛陽に入ると、高乾は身の危険を感じて東冀州に逃亡。同年、孝荘帝が即位すると、龍驤将軍（りゅうじょうしょうぐん）・通直散騎常侍（つうちくさんきじょうじ）に任じられました。爾朱栄が洛陽の有力者を次々と殺害するのを見て、高乾は兄弟とともに河北の流民を率いて反乱を起こし、葛栄（かつえい）から官爵を受けました。斉州の官軍を幾度も撃退しましたが、孝荘帝が右僕射（うぼくや）の元羅（げんら）を派遣して懐柔を図ると、兄弟揃って降伏。北魏朝廷に給事黄門侍郎（きゅうじこうもんじろう）として迎えられました。

しかし、爾朱栄は高乾を警戒して近づけようとせず、孝荘帝もやむなく高乾を解任して故郷に帰らせました。故郷では武人を集め、狩猟を楽しむ日々を送っていましたが、530年に爾朱栄が殺害されると、洛陽に駆けつけ、孝荘帝に謁見を求めました。再び重用された高乾は、金紫光禄大夫（きんしこうろくたいふ）・河北大使（かほくたいし）に任じられました。

爾朱兆（じしゅちょう）が洛陽に入り孝荘帝を殺害すると、監軍の孫白鷂（そんはくよう）が冀州にやってきました。高乾は爾朱氏への復讐を誓い、壮士を率いて冀州の州城を襲撃し、孫白鷂を殺害、冀州刺史の元嶷（げんぎ）を捕らえました。封隆之（ほうりゅうし）を推薦して冀州の事務を代行させ、孝荘帝のために喪に服しました。

531年、幽州刺史の劉霊助（りゅうれいじょ）と連携しましたが、劉霊助は間もなく殺害されてしまいます。高歓（こうかん）が挙兵して山東に進出すると、高乾は十数騎を率いて関所で高歓を迎え入れました。爾朱羽生（じしゅうせい）が殷州刺史（いんしゅうしし）となると、高歓は李元忠（りげんちゅう）に軍を率いて殷州に迫らせる一方、高乾を偽の援軍として派遣しました。高乾は爾朱羽生と面会して対策を協議するふりをし、油断した爾朱羽生を捕らえさせ、殷州を陥落させました。その後、高歓が新たな皇帝を擁立する会議に参加し、侍中（じちゅう）・司空（しくう）に任ぜられました。

532年、孝武帝（こうぶてい）が即位すると、高乾は辞職を願い出ましたが、侍中のみを解任され、司空のまま長楽郡公（ちょうらくぐんこう）に封ぜられました。しかし、孝武帝は高歓を排除しようと画策し、高乾に取り入ろうとしました。高乾は孝武帝に都合の良い返事をしながらも、高歓に報告することを怠りました。孝武帝が賀抜岳（がばつがく）との連絡を密にし、賀抜勝（がばつしょう）を荊州刺史に任じようとした際、高乾は危険を察知し、ようやく高歓に報告しました。高歓が高乾を并州（へいしゅう）に呼び出すと、高乾は高歓に北魏から禅譲を受け、新たな王朝を樹立するよう進言しましたが、高歓はそれを拒否しました。

高乾は異変を恐れ、徐州（じょしゅう）への赴任を願い出ました。使持節（しじせつ）・都督三徐諸軍事（ととくさんしょしょぐんじ）・開府儀同三司（かいふぎどうさんし）・徐州刺史に任じられましたが、出発直前に孝武帝は高乾が情報を漏洩したことを知り、高歓に高乾との密約を暴露しました。高歓も高乾との間で交わした書状を孝武帝に送りつけました。孝武帝は高乾を呼び出して書状を示し、門下省に監禁しました。高乾は「人主が悪を推しては、天命から逃れられぬ」と嘆き、処刑されました。後に高歓は、高乾の献策を採用していればこのような事態にはならなかったかもしれないと後悔したと伝えられています。

534年、高乾は使持節・都督冀定滄瀛幽斉徐青光兗十州諸軍事・太師・録尚書事・冀州刺史の位を追贈され、文昭（ぶんしょう）と諡（おくりな）されました。

長男の高継叔（こうけいしゅく）が高翼の楽城県侯（がくじょうけんこう）の位を継ぎ、次男の高呂児（こうろじ）が高乾の爵位を継承しました。

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