北村昌幸

北村昌幸（きたむら まさゆき）は、明治27年（1894年）10月3日に生まれ、昭和19年（1944年）9月9日に戦死した海軍軍人です。最終階級は少将でした。

石川県金沢市下石引町に生まれた北村は、金沢第二中学校で学んだ後、有数の難関校として知られた海軍兵学校（45期）に入校しました。時は第一次世界大戦が始まった大正3年（1914年）9月10日のことでした。この海兵のほか、第一高等学校、陸軍士官学校は当時の名門校であり、合格には旧制中学校で常に優秀な成績（5番以内が目安とされたといいます）を収めていることが必須でした。北村の海兵入校時の成績は100名中74番でしたが、官報によると、彼は陸軍士官学校（第29期）の試験にも合格していたことが確認されています。彼の出身地である石川県内から海兵に合格を果たしたのは、金沢第一中学校出身の橘正雄（入校時5番、後の大佐）と北村のわずか二人だけでした。

海軍兵学校第45期は、伏見宮博義王をはじめ、後に海軍省や軍令部で要職を務めた者、あるいは太平洋戦争において大型艦の艦長として激戦を戦った者など、多くの有為な人材を輩出しました。同期には中村勝平（海軍省首席副官、妙高艦長）、長井満（隼鷹艦長）、古村啓蔵（扶桑艦長、武蔵艦長）、中瀬泝（海軍省人事局第一課長、伊勢艦長）、富岡定俊（軍令部作戦課長、大淀艦長）、兄部勇次（利根艦長、長門艦長）、森下信衛（榛名艦長、大和艦長）、有賀幸作（鳥海艦長、大和艦長）といった、後の海軍を支える面々が名を連ねています。

大正6年（1917年）11月24日、海兵を88番で卒業した北村は、少尉候補生に任じられます。その後、砲術学校や水雷学校で専門知識を修得し、馬公や鎮海の防備隊、佐世保海兵団などで勤務しますが、戦死するまでの約27年間の大半を洋上での勤務に費やしました。大尉に進級して間もない昭和3年（1928年）からは掃海艇長を二度務め、さらに少佐・中佐時代には駆逐艦長を四度にわたって歴任するなど、艦艇の指揮官としての経験を重ねました。

昭和16年（1941年）12月に太平洋戦争が勃発した時、北村は中佐の階級で第21掃海隊司令（第7号、第8号、第9号、第10号、第11号、第12号掃海艇）の役職にありました。海軍が緒戦で大きな戦果を挙げていた昭和17年（1942年）4月、彼は陽炎型駆逐艦四隻（浜風、浦風、谷風、磯風）で編成された新鋭の第17駆逐隊司令を拝命します。この時、北村はセイロン沖海戦を終えたばかりの第1航空艦隊（司令長官は南雲忠一中将）の指揮下に着任し、谷風を司令駆逐艦としました。

同年4月に発生したドーリットル空襲の影響を受けて決定されたMI作戦（ミッドウェー海戦）にも第17駆逐隊司令として参加しています。5月1日には大佐に進級しました。ミッドウェーの激戦では、日本海軍の主力空母四隻（赤城、加賀、蒼龍、飛龍）が次々と沈没していく光景を目の当たりにしました。およそ一年間の第17駆逐隊司令職を務め上げた後、昭和18年（1943年）8月16日付で、第2水雷戦隊（司令官は高間完少将）の旗艦である軽巡洋艦「長良」の艦長を命じられました。同日、長良は修理と改修のため舞鶴に入港し、21号電探や電波探知機などの新装備が搭載されるとともに、旧式の探照灯や測距儀の換装が行われました。同年11月、長良は組織再編により第4艦隊（司令長官は小林仁中将）の旗艦となり、クェゼリン環礁を拠点として、ギルバート諸島・タラワ環礁における戦いに従事しました。

昭和19年（1944年）1月、北村は海上交通保護を図るため編成された第1海上護衛隊（担当区域は東南アジアから内地、南西方面艦隊所属）の運行指揮官の任に就きます。しかし、この海上護衛隊は旧式艦や特設艦が中心で、対潜・対空能力に優れた専用艦艇や十分な兵力が不足していました。そのため、連合軍による本格的な通商破壊に対抗することが難しく、日本の輸送船団には甚大な被害が相次ぎました。そして、同年9月9日、北村昌幸はこの任務遂行中に戦死し、その際に少将に進級しました。

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