富岡定俊

富岡定俊

富岡定俊（とみおか さだとし）は、1897年（明治30年）3月8日に広島県江田島で生まれ、1970年（昭和45年）12月7日に没した、日本の海軍軍人であり、華族の男爵でもありました。最終階級は海軍少将です。

生い立ちと初期の経歴

富岡定俊は、海軍中将の富岡定恭の長男として生まれました。幼少期を江田島の海軍兵学校付属小学校で過ごし、高千穂中学校を経て、1914年（大正3年）に海軍兵学校に入学しました。1917年（大正6年）には、父の死去に伴い男爵を襲爵しています。同年、海軍兵学校を卒業し、少尉候補生として練習艦隊での航海に出発しました。

海軍軍人としてのキャリア

1918年（大正7年）に海軍少尉に任官後、装甲巡洋艦「阿蘇」に乗り組み、ニコラエフスク警備にも従事しました。その後、水雷学校や砲術学校で学び、各艦の乗組員や航海長を歴任しました。1927年（昭和2年）には駆逐艦長に就任し、1929年（昭和4年）には海軍大学校を首席で卒業、フランス駐在を経て、国際連盟海軍代表随員兼軍令部参謀を務めました。

1932年（昭和7年）に帰国後、「衣笠」航海長などを経て、軍令部や海軍省で要職を歴任。1939年（昭和14年）には海軍大学校教官となり、戦略物資の研究に力を注ぎました。この時期、米の需要を満たすために南部仏印が必要であるという結論に達しました。

太平洋戦争と富岡の役割

太平洋戦争開戦時、富岡は軍令部の一部一課長として作戦立案の中枢にいました。彼は、連合艦隊が主張するハワイ攻略に反対し、海上交通破壊戦を重視していました。ミッドウェー作戦の際には、アリューシャン方面での作戦を提案するなど、戦略的な視点を持っていました。また、米豪分断のためのFS作戦を立案しましたが、実現には至りませんでした。

1943年（昭和18年）には「大淀」艦長、南東方面艦隊参謀副長などを歴任。1944年（昭和19年）に海軍少将に進級し、南東方面艦隊参謀長兼第11航空艦隊参謀長を務めました。軍令部では、作戦家として高く評価され、台湾や沖縄の視察を通じて、沖縄での決戦の必要性を強く主張しました。

1945年（昭和20年）、戦艦大和による沖縄特攻作戦には反対しましたが、最終的に作戦は実行されました。終戦間際には、和平工作に奔走し、及川古志郎大将の説得を担当しました。

戦後

終戦後、富岡は皇統護持作戦を立案し、皇族の疎開を計画しましたが、天皇制が維持されることになったため、作戦は解消されました。また、アメリカ軍による降伏文書調印式には、日本側全権団随員として参加しました。

その後、第二復員省で史実調査部長を務めましたが、公職追放となり、後に防衛庁顧問に就任しました。また、発明家としても活動し、複数の特許を取得しています。富岡は、開戦について軍部の独走を否定し、昭和天皇の意思があったことを主張しました。また、二・二六事件に関する海軍の資料を密かに所蔵しており、その内容は後に公開されました。

人物評

富岡定俊は、戦略的な視点と高い作戦立案能力を持つ軍人として知られています。太平洋戦争においては、開戦前から戦局の悪化を予測し、独自の戦略を主張しました。終戦後は、日本の復興に尽力し、その知性と先見の明は、多くの人々に感銘を与えました。

著書

『開戦と終戦　人と機構と計画』 毎日新聞社、1968年
『開戦と終戦　帝国海軍作戦部長の手記』 中公文庫、2018年

親族

祖父：富岡宗三郎（松代藩藩士、海防隊長）
父：富岡定恭海軍中将
叔父：富岡延治郎海軍機関少将
長男：富岡定博（海兵75期）
義兄弟：丸山寿美太郎海軍大佐
義兄弟：津留雄三海軍大佐

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