北爪利世

北爪利世: 日本のクラリネット界の先駆者

北爪利世（きたづめ りせい、1916年4月28日 - 2004年6月30日）は、日本のクラシック音楽界において特に重要なクラリネット奏者の一人として知られています。彼はその生涯を通じて多様な活動を展開し、演奏や教育を通じて数多くの後進に影響を与えました。

初期のキャリア

北爪は、旧制成城学園オーケストラでクラリネットの演奏を始めたことから彼の音楽人生がスタートしました。この際、成城合唱団にも身体を置きながら、新交響楽団（現在のNHK交響楽団）と共演する機会も得ました。彼の最初期の同窓には作曲家の柴田南雄などが存在し、彼らとの交流は北爪の音楽的な背景に大きな影響を与えました。

学び舎と後の発展

1937年に東京音楽学校（現在の東京芸術大学音楽学部）に入学し、同級生に千葉（後の川崎）静子をはじめ、佐々木成子、中山悌一、栗本正、高田信一、中田一次、中山冨士雄といった多才な音楽家たちがいたことは、北爪のキャリアにとって重要な要素でした。1943年に同校を卒業後は、東京放送管弦楽団や東京都フィルハーモニー管弦楽団（現在の東京フィルハーモニー交響楽団）に所属した後、東宝交響楽団（現在の東京交響楽団）で首席奏者としての役割を果たしました。

室内楽と教育活動

北爪は室内楽でも非常に活躍し、多くの国内外の作曲家による作品の初演を手がけました。また、浜中浩一、村井祐児、磯部周平、鈴木豊人といった多くの優れたクラリネット奏者を育てたほか、東京芸術大学や桐朋学園大学、山形大学、相愛大学、日本大学芸術学部などの教育機関においても幅広い教育活動を展開しました。

家族と業績

北爪の音楽的影響は家族にも及び、弟の北爪規世はヴィオラ奏者として知られています。また、長女の北爪やよひ、長男の北爪道夫、孫の北爪裕道は作曲家であり、家族全体が音楽界での存在感を示しています。北爪利世は、日本クラリネット協会の初代名誉会長を務め、桐朋学園大学の名誉教授としても活躍しました。

自伝と作曲作品

彼の人生に関する詳細は、口述筆記によってまとめられた自伝『音の終わりを大切に〜北爪利世の「クラリネット、わが人生」』（近藤滋郎編、音楽之友社　ISBN 4-276-20185-3）に記されています。また、作曲活動にも力を入れ、2020年に北爪道夫によって校訂された「クラリネットとピアノのための舞曲風小品」や、「東京都杉並区立八成小学校校歌」などが作品として残されています。

北爪利世の影響はクラリネット界にとどまらず、日本のクラシック音楽全般に広がり、彼の遺した功績は今もなお多くの音楽愛好者によって称えられています。

もう一度検索