十八大通

十八大通：江戸を彩った粋人たち

十八大通（じゅうはちだいつう）とは、江戸時代に名を馳せた通人たちを指す言葉です。彼らの多くは札差（ふださし）と呼ばれる、武士に金を貸し付ける金融業者でした。この「十八」という数は、実際の人数を指すのではなく、「八百万の神々」や「江戸八百八町」のように、多数や縁起の良い数を表していると考えられています。

豪快な遊びと文化への貢献

十八大通と呼ばれた人々は、義侠心と洒落っ気を持ち合わせ、吉原での遊興に大金を費やしました。その豪快な金遣いは、江戸っ子の気質を体現するもので、人々を魅了しました。彼らは単なる遊び人ではなく、歌舞伎や俳諧、茶番劇、琴、能、踊り、河東節、浄瑠璃、一中節、らっぱなど、多岐にわたる芸能や文化を愛し、支援しました。特に歌舞伎においては、興行の援助者であり、役者たちのパトロンとしても重要な役割を担っていました。

役者との交流

大通たちは、お気に入りの歌舞伎役者の振る舞いを真似て、衣装や持ち物まで揃えるほど熱心なファンでした。役者もまた、舞台で大通の姿を取り入れるなど、両者の間には独特な交流がありました。このような相互作用によって、芝居の世界はますます華やかで派手になり、江戸の文化を彩りました。

大通の代表格

中でも特に有名だったのは、「御蔵前の今助六」と称された大口屋暁雨です。彼は、大通たちの華やかな姿を象徴する人物でした。

活躍の時期と変化

十八大通として知られる人々が活躍したのは、主に宝暦年間（1751年 - 1763年）から天明年間（1781年 - 1788年）にかけての時期です。この時代には、札差がその中心的な存在でした。しかし、文化・文政期（1804年 - 1829年）になると、札差の数は減少し、派手な浪費や吉原での豪遊に関する話も少なくなっていきました。かつては、一晩に百両、二百両を費やすことがもてはやされましたが、時代が変わるとともに、十両、二十両で粋に遊ぶ方が「通人」と見なされるようになったのです。

棄捐令と大通たち

寛政元年（1789年）の棄捐令（きえんれい）発令時には、十八大通に名を連ねた札差たちも債権放棄を余儀なくされました。しかし、彼らの棄捐金額は平均よりもやや上程度であり、当時、大通並みの経営規模を持つ札差が多かったことが伺えます。

十八大通と呼ばれた人々の例

『通人舞』、『通俗雲談』、『御蔵前馬鹿物語』、『残菜袋』といった文献に、十八大通と呼ばれた人々の通称や屋号、商売などが記録されています。


十八大通は、江戸時代の一つの側面を象徴する存在であり、彼らの豪快な生き方は、当時の人々に大きな影響を与えました。彼らの活動は、江戸の文化や芸能を豊かにし、現代においてもその魅力は色褪せることはありません。

参考文献

『御家人の私生活』高柳金芳著 雄山閣出版
『将軍と大奥 江戸城の「事件と暮らし」』 山本博文著　小学館
『江戸の高利貸 旗本・御家人と札差』北原進著　吉川弘文館
『金貸しの日本史』水上宏明著 新潮新書

もう一度検索