千本長勝

千本長勝の生涯

千本長勝（せんぼん ながかつ）は、江戸時代の武将で、旗本として活躍しました。彼は下野国の那須七騎の一つである千本氏の庶流家で、初代当主の子孫として生まれました。父である千本資勝の知行は880石であり、長勝は家督を相続する中で、数々の歴史的な出来事に関与しました。

若年期と家督相続

長勝は元和7年（1621年）12月、徳川秀忠に初めて謁見しました。寛永7年（1630年）には、父の死去により家督を相続し、千本家の当主となります。寛永17年（1640年）には、徳川家光が日光社参を行うにあたり、同年1月26日に日光東照宮の社殿修理を福原資盛と共に行うなど、幕府との強い関係を築くことに努めました。

泉騒動と幕府との関係

長勝の名が歴史に刻まれた理由の一つは、正保元年（1645年）の泉騒動と呼ばれる事件です。この事件は、甥である岡本義政が旗本岡本保真を泉城内で暗殺し、その証拠を隠蔽しようとしたものです。長勝は保真の遺族として、幕府に対して「保真は謀略によって殺された」と訴えましたが、義政はこれに反論し、事は幕府評定所で審議されました。

この事件は長引きましたが、審議中に幕府の大老・土井利勝が没したため、幕府がこの問題に介入できなくなってしまいました。最終的には、岡本義政と長勝が改易され、福原資盛は蟄居処分を受ける結果となり、義政は九州の久留米藩に預けられることになりました。ここで興味深いのは、後に福原資盛の蟄居が解かれ、長勝も約20年後に旗本に復帰した点です。一方、岡本義政には再度禄が与えられず、結果的に義政のみが罰を受ける形で騒動は収束しました。

隠居と家の断絶

長勝は延宝3年（1675年）の5月18日に致仕し、嫡男金助に家督を譲って隠居生活を始めます。このとき、彼は「夢休」と名乗ります。しかし、延宝5年（1677年）には金助が突然発狂し自害してしまい、子がないために大谷津千本氏は無嗣断絶に至り、再び改易される運命に見舞われました。

70歳の時、夢休は牢人となりましたが、幕府から蔵米200俵を新たに与えられることに。こうして最後まで一定の地位を保持しましたが、家系の未来が失われたことは明白でした。

長勝は貞享2年（1685年）8月5日に81歳で逝去します。彼の死によって、千本長勝の家系は完全に断絶しました。その波乱に満ちた生涯は、江戸時代の武士の一端を垣間見せるものとなっています。彼の歴史的な貢献と事件は、今日でも多くの文献に取り上げられています。

参考資料

• - 寛政重修諸家譜
• - 延宝日記
• - 矢板市史編集委員会編『矢板市史』矢板市、1981年

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