千葉胤宗

千葉胤宗（ちば たねむね）

概要

千葉胤宗は、鎌倉時代中期から後期にかけて活躍した武将であり、鎌倉幕府の御家人でした。千葉氏の第10代当主として、その名を歴史に刻んでいます。第8代当主・千葉頼胤の次男として生まれました。

父・頼胤の死後、兄である宗胤が異国警固番役として肥前国へ赴き、下総国を離れることになりました。そのため、胤宗が留守を預かることになり、千葉氏の第10代当主となったのです。当時、六浦荘の地頭であった金沢北条氏は、下総国守護の千葉氏と深い縁を結んでいました。北条顕時は、娘を胤宗に嫁がせることで、さらにその関係を深めたとされています。このことから、胤宗と北条氏の関係は非常に深く、その名も、得宗家当主であり鎌倉幕府第8代執権であった北条時宗から一字を賜り、「胤宗」と名乗ったと考えられています。

胤宗の死後、子の貞胤は、南北朝の戦いにおいて、北朝方についた兄・宗胤の嫡男である胤貞と千葉氏の家督を巡って争いました。貞胤は敗れて北朝に降伏しましたが、その後、北朝方に寝返り、千葉氏の家督を維持することに成功しました。この結果、胤宗の子孫が千葉氏の宗家として存続することとなったのです。

伝承

『千学集抜粋』や『妙見実録千集記』には、以下のような伝承が伝えられています。

胤宗が大番役として京都に滞在していた頃、内裏の宝蔵に、藤原保昌が酒呑童子から奪ったとされる「宝生の懐太刀」という宝剣があると聞きました。胤宗は、蔵の鍵を管理していた女房と関係を持ち、その宝剣を持ち出してそのまま帰国し、千葉妙見宮に奉納したとされています。しかし、その後、その女房が宝剣を紛失した罪で処刑されたという話を聞き、胤宗はこれを深く後悔しました。そして、女房の菩提を弔うために7体の阿弥陀仏を造らせ、供養したと伝えられています。

この伝承は、兄・宗胤の系統と比較して嫡流としての正当性に欠けると見られていた胤宗の子孫の千葉氏宗家が、武者として名高い藤原保昌や千葉妙見宮にまつわる伝承を胤宗に結びつけることで、自らの権威を高めようとしたものと考えられています。

参考資料

北条氏研究会 編『北条氏系譜人名辞典』新人物往来社、2001年。ISBN 4-404-02908-X。
『千葉県の地名』平凡社〈日本歴史地名大系 12〉、1996年。ISBN 978-4-582-49012-1。

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