南オセチア共和国軍

南オセチア共和国軍の概要

南オセチア共和国軍は、1992年に設立された南オセチア共和国の国軍です。その歴史は、1991年から1992年にかけて発生した南オセチア紛争に端を発します。紛争終結後、各種自警団や武装集団を基盤として正式に創設されました。

歴史

1993年1月には非常事態・国防省が設置され、同年2月23日には最初の正規部隊が編成されました。この日は「祖国防衛者の日」として記念されています。初期の装備調達は、以下のような方法で行われました。

グルジアからの奪取・購入（グルジア警察の自発的引き渡しを含む）
ザカフカーズ軍管区部隊（第37工兵連隊、第299独立戦闘ヘリ連隊）からの奪取・購入
北カフカーズ軍管区部隊からの奪取・購入
チェチェン人及びイングーシ人からの購入

1996年には、住民からの武器買い上げを開始し、正規軍化が進められました。同年、徴兵制と志願制を組み合わせた制度が確立し、最初の召集が行われました。1997年には下級将校の訓練課程が設立され、卒業生は少尉に任官されました。

2002年には、国家予算に国防費が計上され、ロシア連邦からの武器・装備の調達が開始されました。また、予備役登録が行われ、動員命令書が配布されました。

2003年のバラ革命後、グルジアのミヘイル・サアカシュヴィリ政権は、領土保全の回復とロシア軍の撤退を要求し、2004年5月には紛争地帯に軍・警察を投入しました。これに対し、南オセチアも軍を動員し、小競り合いが頻発しました。この際、ロシアから多数の義勇兵と武器が流入し、ロシア連邦軍のアナトーリー・バランケヴィッチ大佐が非常事態・国防相に任命されました。グルジア側は8月末までに紛争地帯から撤退しました。

2008年8月の南オセチア紛争では、主にドザウ地区と道路の援護に回り、一部部隊はツヒンヴァリ守備隊に編入され、同市の防衛に参加しました。同年10月31日には、非常事態・国防省が非常事態省と国防省に分離され、ユーリー・タナーエフ将軍が国防大臣に任命されました。

組織

南オセチア共和国軍の統制機関は、国防省と参謀本部です。主な部隊構成は以下の通りです。

7個狙撃大隊（各200～250人、平時の充足率60％）
自動車化狙撃大隊
偵察大隊
物資機材保障大隊
対戦車砲大隊
砲兵大隊
多連装ロケット砲中隊
高射ミサイル・砲兵中隊
独立戦車中隊
独立山岳特殊任務中隊
独立狙撃手中隊
独立工兵中隊
独立通信中隊
独立警備中隊
名誉警衛小隊

装備

南オセチア共和国軍は、以下の装備を保有しています。

戦車：T-55、T-72、T-72 SIM-1（計15両）
歩兵戦闘車：BMP-1 / BMP-2（計22両）
装甲兵員輸送車：BTR-70 / BTR-80（計24両）
偵察戦闘車：BRDM-2（6両）
自走榴弾砲：122mmグヴォージカ（12門）
榴弾砲：122mmD-30（12門）
多連装ロケット発射機：BM-21グラード（6基）
迫撃砲：120mm2B11（2S12）（18門）、82mm2B14（30門）
対戦車砲：100mmMT-12ラピラ（4門）
自動迫撃砲：2B9ヴァシリョーク（3門）
銃架式擲弾筒：73mmSPG-9（10基）
対戦車誘導ミサイル：9K111ファゴット、9K113コンクールス（計50基）
自走式対空砲：ZSU-23-4シルカ（4両）
高射ミサイル複合体：ストレラ-10（4基）
携帯式高射ミサイル：イグラ、ストレラ（100基以下）
高射機関砲：ZU-23-2（12門、ウラル-4320搭載）
ヘリコプター：Mi-8（4機）

小火器は、ロシア製とグルジアからの鹵獲品が使用されています。

徴兵制度

徴兵制と志願制の混合制度が採用されており、召集期間は1年間です。

教育制度

ドザウ地区に教育センター「バルス」が存在し、全兵科の特技兵の訓練を行っています。将校は、ロシア連邦軍の軍事学校で教育を受けます。

準軍事組織

内務省：OMON2個大隊、SOBR（250人）
国家保安委員会：国境警備隊
国家警護庁：50人

関連項目

南オセチア紛争 (2008年)

もう一度検索