南嶽懐譲

南嶽懐譲（なんがく えじょう）は、中国唐代の禅僧であり、諡号を大慧禅師（だいえぜんじ）といいます。俗姓は杜（と）、金州安康県（きんしゅうあんこうけん）の出身です。

生涯

懐譲は、当初、五祖弘忍（ごそ こうにん）の法を継いだ嵩山（すうざん）の慧安（えあん）の下で修行をしていました。しかし、慧安は懐譲の資質を見抜き、彼を六祖慧能（ろくそ えのう）の元で修行させることを勧めました。懐譲は慧能の元へ赴き、そこで最初の問答に臨みました。

慧能は懐譲に対し、「ノコノコとわしの前に出てきた奴は何者か」と問いかけましたが、懐譲はこれに答えることができませんでした。この問答は、懐譲にとって長年の課題となり、8年の修行を経て、ついにその意味を理解するに至ります。彼は慧能に対し、「あの時は答えることができませんでしたが、ようやく見解を呈する自信がつきました」と述べました。そして、慧能に促されて、彼は「説似一物即不中（ある程度それらしい説明はできるが、その真味を伝えることは到底できない）」という言葉を呈しました。

逸話と教え

懐譲は、弟子である馬祖道一（ばそ どういつ）との間で交わされた逸話で特に有名です。道一が座禅に打ち込む姿を見た懐譲は、彼に「瓦を磨いて鏡にしようとするようなものだ」と諭しました。この「南嶽磨磚（なんがくません）」の逸話は、形式的な修行に捉われることなく、禅の本質を捉えることの重要性を説いています。懐譲は、言葉や概念に囚われず、直接的な体験を通して真理を悟ることを重視しました。

参考文献

* 芳賀洞然『五燈会元鈔講話：中国禅界の巨匠たち』淡交社、1996年。ISBN 4473014762。

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