南海部郡

南海部郡（みなみあまべぐん）

南海部郡は、かつて大分県に存在した郡です。その領域は、現在の佐伯市（宇目地域を除く大部分）と豊後大野市の一部（三重町山部）に相当します。

江戸時代の郡域

江戸時代、現在の南海部郡の地域は、天領であった一部の村を除き、大部分が佐伯[[藩]]の領地でした。佐伯[[藩]]は、幕府から公認された御朱印村を基本単位とし、その下に多数の枝郷を従えていました。これらの枝郷は、必要に応じて再編され、その名称や範囲は時代によって変動しました。享和3年（1803年）に作成された『郷村仮名附帳』によって、そのおおよその状況を知ることができます。

『旧高旧領取調帳』では、枝郷やさらに下位の小字が村として扱われ、村高が割り当てられたため、村の数は146と約6倍に増加しました。佐伯[[藩]]は、領内の村を農山村である「在方」と漁村である「浦方」に分類し、それぞれの特性に応じた支配を行っていました。

佐伯[[藩]]の領域内には、一部に天領（幕府領）やその相給となっている場所も存在しました。これらの地域は、もともと初代藩主毛利高政の弟・吉安の所領でしたが、吉安が藩と対立した結果、寛永10年（1633年）に幕府に献上され、吉安自身は旗本となりました。この吉安の旧領は、一時佐伯[[藩]]の預かり地となりましたが、後に日田代官所の管轄となり、天明3年（1783年）に再び佐伯[[藩]]の預かり地となり、明治3年（1870年）に日田県に移管されるまで続きました。

明治11年（1878年）の海部郡分割の際には、上浦村組と大坂本村組が南海部郡と北海部[[郡]]に分割された以外は、全域が南海部郡の管轄となりました。

明治時代以降の変遷

郡発足までの沿革

明治初年における海部郡の支配状況は、『旧高旧領取調帳』に記載されていますが、過渡期の再編・細分化のため、実際の村割と記載内容には差異が見られます。また、明治8年（1875年）には村落の統合が行われ、明治11年（1878年）の海部郡分割時に存在した村名とも一部ずれが生じています。

主な出来事
明治3年12月24日（1871年 2月13日）：佐伯[[藩]]預地が日田県の管轄となる。
明治4年7月14日（1871年 8月29日）：廃[[藩置県]]により、佐伯[[藩]]領が佐伯県の管轄となる。
明治4年11月14日（1871年 12月25日）：第一次府県統合により、全域が大分県の管轄となる。
明治8年（1875年）3月13日：各町村の統廃合が行われ、46村36浦1島となる。

郡発足以降の沿革

明治11年（1878年）11月1日、郡区町村編制法により、海部郡のうち佐伯村など46村36浦2島に行政区画としての南海部郡が発足しました。郡役所は佐伯村に設置されました。

明治20年（1887年）には、屋形島が蒲江浦に編入され、46村36浦1島となりました。

明治22年（1889年）4月1日、町村制の施行により、1町23村が発足しました。佐伯村は単独で佐伯町となり、その他の村は周辺の村と合併して新たな村となりました。

明治24年（1891年）4月1日、郡制が施行されました。

明治44年（1911年）1月1日、蒲江村が町制を施行して蒲江町となり、2町22村となりました。

大正5年（1916年）7月には、佐伯町（さえきちょう）が佐伯町（さいきちょう）に改称されました。

大正11年（1922年）9月1日、東中浦村が廃止され、一部が中浦村となり、残りが改めて東中浦村となりました。

大正12年（1923年）4月1日、郡会が廃止され、郡役所は存続しました。

大正15年（1926年）には郡役所が廃止され、以降は地理区分名称となりました。

昭和12年（1937年）4月1日、佐伯町・鶴岡村・上堅田村が合併し、佐伯町（さいきちょう）が発足しました。

昭和16年（1941年）4月29日、佐伯町・八幡村・大入島村・西上浦村が合併し、佐伯市が発足して郡から離脱しました。

昭和17年（1942年）7月1日、佐伯市に南海部地方事務所が設置され、大野郡の一部も管轄しました。

昭和25年（1950年）には、大野郡重岡村・小野市村が本郡の所属となりました。

昭和25年（1950年）12月19日、東上浦村が上浦村に改称しました。

昭和26年（1951年）1月1日、上浦村が町制を施行して上浦町となりました。

昭和26年（1951年）4月1日、直見村・川原木村が合併して直川村が発足しました。

昭和30年（1955年）3月31日には、蒲江町など4町村が合併し、蒲江町が改めて発足しました。また、東中浦村など3村が合併して鶴見村が発足し、木立村など3村が佐伯市に編入されました。

昭和30年（1955年）6月1日、中野村・因尾村が合併して本匠村が発足しました。

昭和31年（1956年）2月1日、明治村など3村が合併して昭和村が発足しました。

昭和32年（1957年）4月1日、昭和村が弥生村に改称しました。

昭和32年（1957年）7月1日、本匠村の一部（山部の一部）が大野郡三重町へ編入されました。

昭和36年（1961年）には、鶴見村が町制施行して鶴見町となり、宇目村も町制を施行して宇目町となりました。

昭和41年（1966年）12月1日、弥生村が町制を施行して弥生町となりました。

平成17年（2005年）3月3日、上浦町など8町村が佐伯市と合併し、南海部郡は消滅しました。

主な参考文献

「角川日本地名大辞典」編纂委員会編『角川日本地名大辞典』 44 大分県、角川書店、1980年11月1日。ISBN 4040014405。
旧高旧領取調帳データベース
佐伯市史（大分県佐伯市、1974年）
日本歴史地名大系 45 大分県の地名（平凡社、1995年）