南涼

南涼（397年 - 414年）

南涼は、五胡十六国時代に鮮卑族の禿髪烏孤（とくはつ・うこ）によって建てられた国です。397年から414年までの短い期間でしたが、河西地方を支配し、その後の歴史に大きな影響を与えました。

建国までの道のり

3世紀初め、鮮卑拓跋部の匹孤（ひっこ）という酋長が部民を率いて拓跋部から分かれ、西方へ移動しました。彼らは漢民族や羌族と混ざり合い、禿髪部と呼ばれるようになります（寿闐の時に禿髪氏へ改姓）。これが河西鮮卑と呼ばれる集団です。

267年、西晋が土地制度を改革すると、西北地域の非漢族が反発し、禿髪部の族長であった樹機能（じゅきのう）は秦州一帯の非漢族を糾合して反乱を起こしました。この反乱は10年にも及びましたが、最終的に鎮圧され、禿髪部の勢力は一時衰退します。

しかし、383年に前秦が淝水の戦いで大敗し、華北が混乱すると、禿髪部は再び勢力を盛り返しました。386年、禿髪思復鞬（とくはつ・しふくけん）は前涼の残党を支援して挙兵しますが失敗。その後を継いだ子の禿髪烏孤が、397年に南涼を建国するのです。

南涼の興亡

397年、禿髪烏孤は廉川堡（れんせんほ）を都とし、西平王を自称して南涼を建国しました。当時の河西地方は、後涼や北涼など様々な勢力が割拠しており、南涼はこれらの勢力と複雑な関係を築きながら勢力を拡大していきます。

烏孤の死後、弟の禿髪利鹿孤（とくはつ・りろくこ）が即位すると、都を西平に移し、北涼との連携を強めます。400年には後涼を破り、河西で最大の勢力となりました。しかし、関中の後秦が河西に進出してくると、利鹿孤は後秦に臣従し、巧みな外交で勢力の維持を図ります。

402年に利鹿孤が亡くなると、弟の禿髪傉檀（とくはつ・じょくだん）が即位し、都を楽都（らくと）に移して王都を整備しました。傉檀は積極的に北涼を攻撃し、一時的に後秦の都である姑臧（こぞう）を領有するなど、南涼は最盛期を迎えます。

しかし、407年以降、南涼は衰退へと向かいます。北涼との戦いに敗れたり、夏の赫連勃勃（かくれん・ぼつぼつ）の侵攻を受けたりするなど、内憂外患が続きました。410年には北涼に都を包囲され、領土を失います。そして414年、西秦の攻撃を受け、都の楽都が陥落し、南涼は滅亡しました。

南涼のその後

南涼は短命な政権でしたが、中国史上初めて拠点を青海省地区に置き、この地の開発を進めたことは特筆されます。この地域は後の青海シルクロードの開通に大きな影響を与え、南涼の時代には法顕（ほっけん）がこのルートを中途まで利用しました。

また、禿髪傉檀の子である禿髪破羌（とくはつ・はきょう、後の源賀）は、北魏に降伏した際、拓跋氏と同族であったことから源氏を与えられ、重用されました。この話は日本にも伝わり、皇別源氏の氏族名の由来になったとされています。

南涼の国家体制

南涼は、支配層である鮮卑族が農業生産に不慣れであったため、周辺地域への侵攻を繰り返し、農民を連行して農業生産を確保していました。官制は漢や魏の制度を踏襲していましたが、政権の中枢は禿髪氏一族によって独占され、漢民族などの任用は限定的でした。特に禿髪傉檀は漢族を信任しなかったため、漢族の支持を失い、それが南涼崩壊の一因になったと言われています。

南涼の文物

現存する南涼の文物としては、楽都故城や虎台（禿髪虎台の点将台）、伝禿髪利鹿孤墓などがあります。また、南涼太初刀という刀剣も知られていますが、現存はしていません。

南涼は短命な政権でしたが、河西地方の歴史において重要な役割を果たし、その後の文化や社会に大きな影響を与えました。

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