赫連勃勃

赫連勃勃（かくれん ぼつぼつ）

赫連勃勃は、五胡十六国時代の夏（大夏・北夏・胡夏）を創建した人物です。匈奴の出身で、劉衛辰の三男として生まれました。当初は劉勃勃と名乗っていましたが、没後に世祖武烈皇帝と諡されました。北魏の太武帝が卑下して改名したため、『魏書』では赫連屈丐（屈孑）と表記されています。

人物像

『宋書』索虜伝において、赫連勃勃は「驍猛にして謀算有り、遠近雑種は皆これに附く」と評されるほどの有力者であり、天下統一を志した英傑と見なされています。しかし、歴史学者の谷川道雄は、彼の残忍な行動にも注目しています。後秦から独立して夏の政権を樹立し、騎馬攻撃によって後秦の国力を疲弊させ、滅亡に追い込みました。その後は東晋の劉裕や北魏と対立し、晩年は皇位を巡って子の間で争いが起こりました。

生涯

幼少期

後漢末の南匈奴の右賢王去卑の後裔で、現在の山西省北部とオルドスの間で遊牧をしていた匈奴鉄弗部の出身です。鉄弗とは、匈奴の父と鮮卑の母を持つという意味とされています。父の劉衛辰はオルドスの代来城に拠点を置き、前秦の西単于でした。381年に劉勃勃として生まれ、母は苻氏です。前秦が淝水の戦いで敗北すると、劉衛辰は勢力を拡大し、後秦や西燕から懐柔を受け、3万8千の兵力で朔方での独立を目指しました。390年から391年にかけて、劉衛辰は子の劉直力鞮に北魏の拓跋珪を攻めさせましたが、撃退され、代来城を占拠されました。劉衛辰は部下に裏切られて殺害され、劉直力鞮は北魏に捕らえられ、鉄弗部は潰滅しました。

後秦への亡命

勃勃は三城郡の鮮卑叱干部へ逃れましたが、受け入れを拒否されたため、後秦の藩鎮である高平の鮮卑破多蘭部の没弈干の下へ身を寄せ、その娘を娶って義父子関係となりました。402年、北魏の中山王拓跋遵が高平を攻撃したため、没弈干と共に後秦に亡命しました。

姚興の部将として

後秦の皇帝姚興は、勃勃の容姿と才能に惚れ込み、驍騎将軍、奉車都尉、安遠将軍、陽川侯に封じました。さらに、安北将軍に昇進させ、五原公に改封し、鮮卑及び雑虜二万余落を統括させました。姚興は当初、勃勃を警戒していましたが、北魏への備えとして彼を重用しました。

夏の建国

407年、姚興が北魏と和平を結んだことに怒った勃勃は、反乱を起こしました。柔然の使者を襲って拘束し、没弈干を殺害してその部衆を併せ、数万の兵力を擁して大夏天王・大単于を称し、国号を大夏と定めました。支配領域はオルドスと高平付近であり、後秦からの攻撃を避けるため、本拠地を定めずに騎馬での遊撃を主な活動としました。領土拡大のため、南方の農耕地帯を騎馬で襲い、後秦を疲弊させました。

夏の拡大

407年、南涼の禿髪傉檀の娘への求婚を断られたことに怒り、南涼を攻撃して大打撃を与えました。408年には、後秦の斉難を捕らえ、オルドスを手に入れました。409年、姚興が親征しましたが、勃勃に大敗しました。412年には、西秦への攻撃を計画しましたが、王買徳に反対されました。

統万城の建設と改姓

413年、オルドスの地に都統万城を築きました。統万とは、「天下を統一し万邦を臨む」という意味です。また、自身の姓を劉から赫連に改め、「赫天に連なる」という意味を込めました。同族の劉姓は鉄伐姓に改めさせました。

後秦滅亡と長安占領

416年、東晋の劉裕が後秦に北伐した隙に、勃勃は後秦から西方を切り取り、安定を手中にして東晋に対抗しました。417年、劉裕が長安を去ると、勃勃は長安を南伐させ、占領しました。長安入りを果たした勃勃は、統万城を都と定め、長安を南都としました。419年に皇帝を名乗り、太子の赫連璝を長安に鎮守させました。

晩年

大臣たちは長安への遷都を請いましたが、勃勃は北魏への備えとして統万城に留めました。424年、太子の赫連璝を廃嫡し、赫連倫を太子に立てました。廃嫡された赫連璝は挙兵して赫連倫を殺害しましたが、赫連昌に討たれました。勃勃は赫連昌を太子としましたが、425年に病死しました。

治世

赫連勃勃は、非漢人として中国に君臨するという意識を持っており、漢化しない政権を築きました。史上二番目に年号を記した貨幣「太夏真興」を鋳造し、城郭建築法を整備しました。

逸話

赫連勃勃は、凶暴残忍な性格で殺戮を好んだと伝えられています。一方で、騎馬民族からは慕われていたといいます。『晋書』には、彼の残虐な逸話が多数記録されています。

宗室

高祖父：劉訓兜（誥升爰） - 元皇帝と追尊
曽祖父：劉虎 - 景皇帝と追尊
祖父：劉務桓（豹子） - 宣皇帝と追尊
父：劉衛辰 - 桓皇帝と追尊
母：苻氏 - 桓文皇后と追尊

后妃

破多羅夫人 - 没弈干の娘
梁氏 - 天王后

子女

赫連璝 - 太子
赫連延（陽平公）
赫連昌（太原公） - 後の太子と皇帝
赫連倫（酒泉公）
赫連定（平原公） - 後の平原王と皇帝
赫連満（河南公） - 427年に北魏に殺される
赫連安（中山公）
赫連助興
赫連謂以代
赫連社干（上谷公）
赫連度洛孤（広陽公）
赫連烏視抜（丹陽公）
赫連禿骨（武陵公）
赫連那勿黎（七兵尚書）
北魏の太武皇后
太武皇后の妹、北魏の太武帝の妃
拓跋素の妻

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