南部信順

南部信順の生涯と業績

南部信順（なんぶ のぶゆき）は、江戸時代後期に活躍した大名であり、八戸藩の最後の藩主として知られています。彼は薩摩藩の藩主・島津重豪の子として生まれ、幼名としては虎之助や篤之丞を持ち、初名は久命でありました。

信順は天保9年（1838年）、八戸藩の第8代藩主である南部信真の婿養子として迎えられます。当時、彼の出自は特に異例であり、薩摩藩の息子として、16代藩主や他の有力藩への養子に選ばれる者が多かったため、八戸藩（2万石）の養子は興味深い選択といえるものでした。その後、信順は藩主の義父・信真の隠居を受けて家督を相続し、徐々にその地位を確立していきました。

信順が藩主になる途中での重要な出来事は、安政2年（1855年）には従四位下に昇進し、翌文久元年（1861年）には侍従任官に就任することです。しかし、彼の真価が問われたのは戊辰戦争の勃発に際する出来事でした。

慶応4年（1868年）が近づくと、八戸藩は奥羽越列藩同盟からの圧力を強く受けることになります。信順の実家である薩摩藩は同盟の敵として見られていたため、彼は厳しい状況に直面しました。それにもかかわらず、信順は巧妙に対応し、名目上は列藩同盟に家老を派遣しながらも、実際には官軍側の久保田藩と連携を図り、波乱の多い時代を乗り越えることに成功しました。この間、八戸藩は戦闘に参加することもなく存続を果たしました。

明治維新の動乱期にあたる明治2年（1869年）には八戸藩知事に就任。その後の廃藩置県に伴い、知藩事の職を辞し、家督を長男の栄信に譲ったのち、明治5年（1872年）に60歳でこの世を去りました。

逸話と信仰

信順はその生涯を通して日蓮宗の信者としても知られており、特に信真の時代から続く大石寺門流への迫害に際して、信仰の重要性を再認識していました。彼は八戸法難と言われる苦境から門流を救うため尽力し、嘉永6年（1853年）には島津斉彬や天璋院と共に深い信仰心を持つようになりました。さらに、八戸藩においても黄檗宗玄仲寺の引寺を発願し、文久元年（1861年）には大石寺末の玄中寺を創建しました。

故郷の鹿児島を懐かしんだ信順は、薩摩式の庭園を八戸藩領に作り上げました。この庭園は現在「南部家庭園」として知られ、平成17年（2005年）に公開されました。信順の家系も興味深く、曾孫の久英が島津家の分家に婿養子として入り、力強い血筋が受け継がれています。

系譜

信順の家族構成も興味深いもので、父は島津重豪、母は於曽美（高木玄達の養女で杉浦作兵衛政信の娘）です。彼の養父である南部信真との関係も密接で、正室は信真の八女である鶴姫、側室には江戸の商家の娘であるふきがいます。彼には長男の南部栄信、次男の南部邦次郎、さらには多くの娘たちがおりました。

南部信順の生涯には、時代の波に翻弄されながらも藩の存続を果たしたリーダーとしての資質が表れており、明治維新に向かう時代の中での重要な役割を担った人物と言えるでしょう。

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