原双桂

原双桂（はら そうけい）

原双桂（1718年 - 1767年）は、江戸時代中期に活躍した儒学者であり、医者でもありました。その学問は、単なる知識の集積に留まらず、既存の学説に対する批判精神と、独自の解釈に基づくものでした。

生涯

京都の町医者の家に生まれた双桂は、幼い頃から学問に励み、その才能を開花させます。当初は古義学派の伊藤東涯に師事しますが、やがて『論語』『孟子』を深く探求する中で、朱子学や古文辞学といった既存の学説に疑問を抱くようになります。彼は、固定観念にとらわれず、自らの頭で考え、真理を追究する姿勢を貫きました。

医術にも志し、大坂や江戸で青木昆陽、高野蘭亭、野呂元丈らと交流を深めます。その後、京都で医者として名を馳せ、その評判が唐津藩主、土井利里の耳に届き、唐津藩に招聘されることになります。

唐津藩では、藩主の長崎巡視に随行し、その際、清の商人の言葉を訂正したり、寺の書画を鑑定するなど、卓越した学識を披露しました。この功績により、彼は医者から儒学教授へと転身を遂げ、その才能をさらに開花させることになります。

その後、藩主の転封に伴い古河へ移り住み、京都に戻ります。晩年は江戸で火災に見舞われ、再び古河に戻るなど、波乱に満ちた生活を送りましたが、学問への情熱は衰えることなく、明和4年（1767年）に50歳で亡くなるまで、著述活動を続けました。

学問と思想

双桂の学問の特徴は、既存の学説に対する批判精神と、独自の解釈に基づく儒学の探求にあります。彼は、伊藤東涯に学んだ古義学の立場からも、朱子学や古文辞学を批判し、より本質的な儒学の理解を目指しました。その思想は、合理主義的であり、実証的な思考を重視するものでした。

著書

双桂は、生涯にわたって多くの著書を著しました。主な著書としては、以下のものが挙げられます。

『双桂集』: 彼の思想や学問を集大成した著作であり、儒学研究における重要な文献として知られています。
『過庭紀談』: 随筆であり、当時の社会や文化、人々の生活について、彼の視点から描かれています。
『温泉考（温泉小言）』: 温泉に関する考察をまとめたもので、医学的な知識だけでなく、文化的な側面にも触れています。
『桂館野乗』『桂館漫筆』: 日常生活や見聞きした事柄を記録したもので、当時の社会を知る上で貴重な資料となっています。

家族

原双桂は、原三右衛門光茂を父とし、原芸庵の娘を母として生まれました。妻は大石氏であり、長男の原良胤は早世しましたが、次男の原恭胤が家督を継ぎました。また、仙台産の馬を飼い、蓬莱、瑤池と名付けていたことからも、彼の豊かな教養と趣味嗜好が伺えます。

評価と影響

原双桂は、江戸時代中期における儒学研究において、独自の足跡を残しました。彼の批判精神と合理主義的な思考は、後世の学者や思想家に大きな影響を与えました。また、医者としても優れた才能を発揮し、多くの人々の健康に貢献しました。彼の業績は、今日においても高く評価されています。

墓所

文京区本駒込の洞泉寺に墓所があります。

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