友田恭助

友田恭助（ともだ きょうすけ）の生涯

友田恭助は、1899年10月30日に東京市日本橋区に生まれ、本名を伴田五郎と言います。彼の父は実業家の伴田六之助で、幼い頃から演劇に親しむ日々を送りました。教育を受けた錦城中学校では、土方与志と親しくなり、茅ヶ崎の伯母の協力を得て、南湖座という芝居小屋を設け、素人劇団を立ち上げて演劇の世界に足を踏み入れました。

学業と初舞台

1917年には早稲田大学の独文科に入学し、在学中に新劇協会の畑中蓼坡から演技を学びます。1919年には、ロシアの劇作家アントン・チェーホフの『ワーニャ伯父さん』で舞台に初めて立ち、本格的な俳優としての道を歩み始めました。この翌年、彼は『青い鳥』の大阪公演に出演するため早稲田大学を中退し、同年には初代水谷八重子や夏川静江と共に「師走会」を結成しました。

築地小劇場の創立と活動

1924年に友田は、小山内薫、土方与志らと共に築地小劇場の創立同人となり、数々の舞台作品に出演します。彼の舞台活動は多岐にわたり、『海戦』や『狼』など、多くの作品でその演技力を発揮しました。1925年には女優の田村秋子と結婚し、1932年には彼女と共に築地座を旗揚げしました。お二人は岸田國士や久保田万太郎などの劇作家と共に、市民感覚を反映した新しい演劇作品を次々と上演しました。

戦争とその運命

しかし、築地座は1936年に解散し、友田は新たな道を模索していました。1937年9月、彼は岸田や久保田と共に文学座を創立することになりますが、その際に友田は召集令状を受け取ります。文学座の結成発表会は、彼が戦地に向かうための歓送会となり、運命的な瞬間でした。彼は9月20日に入隊し、上海郊外の呉淞で戦死します。友田の死は、彼の妻である田村秋子の意向により、文学座の第一回公演が遅れることになりました。

友田恭助の遺産

友田の死を悼む声は多く、著名な詩人である西條八十は、彼に捧げた長詩を発表します。また、彼の劇人生は『敵前渡河 噫！友田伍長』として映画化され、翌年には上映されました。彼の別荘があった茅ヶ崎市南湖4丁目には「伴田の坂」と呼ばれる坂が残され、今日でも友田の足跡を感じることができます。

友田恭助の生涯は、演劇に対する強い情熱と戦争の悲劇が交錯する、波乱に満ちたものでした。彼の貢献は日本の新劇史において重要な位置を占めており、その演技は多くの人々に記憶されています。

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