反聖職者主義とは？意味をやさしく解説

反聖職者主義

反聖職者主義とは、宗教上の権威、特にカトリック教会や教皇の権威・権力（教権）を否定する考え方を指します。広義には、聖職者や宗教そのものが、政治や市民の日常生活といった世俗的な分野に介入すること全般に反対する立場を意味します。

無神論者や不可知論者、リベラル派や左翼だけでなく、ローマからの独立を主張したガリカニストやジャンセニストのようなフランスのカトリック教会、あるいはラテンアメリカのカトリック教会など、キリスト教会内部にもこの考えを受け継ぐ人々が存在します。

各国における反聖職者主義

フランス

フランス革命の時代には理性崇拝運動が起こり、マクシミリアン・ロベスピエールは最高存在の祭典を開催しました。この時期からカトリック教会と政権との間に亀裂が生じましたが、1801年のコンコルダートによってナポレオン・ボナパルトとカトリック教会は和解しました。しかし、フランス第三共和政では反聖職者主義の左翼が反ユダヤ主義を主張するなど、複雑な様相を呈しました。現代においても、共和派には反聖職者主義の考えを持つ人々が多く存在します。

ラテンアメリカ

アルゼンチンでは、フアン・ペロン大統領やペロニスタが国家主義を推進したため、聖職者による政治介入を嫌いました。1966年にはコンコルダートが結ばれ、アルゼンチン政府はバチカンの許可なく教区を変更することが認められました。

一方、メキシコでは皇帝アグスティン・デ・イトゥルビデが王権神授説を信奉し、カトリック重視の政策を推進しました。この傾向はハプスブルク家支配下やポルフィリオ・ディアス政権下でも続き、1910年のメキシコ革命まで継続しました。革命後、ラサロ・カルデナス大統領は教会との明確な距離を置き、教会財産の国有化を宣言しました。これに対し、「シナルキスタ」という親カトリック組織が抵抗しました。中南米においては、カトリック教会がスペイン帝国によって押し付けられた文化であると見なされることもあり、教会から距離を置こうとする権力者が現れました。そのため、右翼陣営や国家主義者の中にも反聖職者主義を支持する人々がいます。

ロシア

ロシアでは、帝政末期にグリゴリー・ラスプーチンが権力を掌握し、ロマノフ朝を破滅させたという歴史的教訓や、共産主義を採用したソビエト連邦の成立によって、反聖職者主義が確立しました。

日本

日本においては、奈良時代に宇佐八幡宮神託事件が発生し、道鏡による皇位簒奪が企てられたことがありました。この事件以降、朝廷では僧侶を政治に近づけてはならないという意識が定着したとされています。

参考文献

レオン・ポリアコフ『反ユダヤ主義の歴史第4巻　自殺に向かうヨーロッパ』菅野賢治、小幡谷友二、宮崎海子、合田正人、高橋博美、筑摩書房、2006年7月。ISBN 978-4480861245。

反聖職者主義